お知らせ

去る10月3日の午前、母が亡くなりました。
6日に通夜、7日に葬儀および告別式を執りおこないました。享年80歳でした。
当たり前のことですが、母のいない日々は始まったばかりです。
私の中にある母の記憶が、いったいいつから始まったかと考えてみると、それは意外にも母の不在の風景でした。
きっと三歳下の妹が生まれたときのことでしょう。
ひとり当時の父の実家に預けられて、勤め先からの父の帰りを、広い玄関で迎えているひとときが、その場所の冷たさとともに記憶にあります。父は小さな玩具を私に与えると、そのまま母のいる病院へと向いました。その玩具は画面に何本もの線が引かれて、やはり線で描かれている画像をその前でずらすと、動いて見えるというものでした。しかしそれで不安な気持ちが解消されるわけではありません。
いままで母がそばにいることが自然だったので、私にとっては突然の不在が強く記憶されたようです。
そして、これからはずっとその日々が続きます。
その時のただ広い玄関のような空間が、いま私の前にあります。
★母は趣味の木工細工の切れ端で、小さな家をたくさん作りました。これはその一部で、このブログの連載だった「10年前の住まい探し」の「口絵」にも用いたものです。