2013-10-01から1ヶ月間の記事一覧

ハロウィンの夜 その一

本日はハロウィンとか、いろいろと大変ではあった。 もともとそんななんちゃって宗教行事に関心がないというか、消極的にだけれども忌み嫌いところもあって、特に政治的側面がチラチラと見え隠れするあたりのモノについては……。長くなりそうなので、セーブモ…

五反田今昔ストーリー その二十七

この太平山で飲んだ回数は、別にカウントしてはいないので、はっきりとはわからないが、いつものあいまいな記憶とやらに頼ると相当な数になるとは思う。 そしてその店には当然のことながら、学校を卒業すると同時に、しばらく足が向くことはなかった。 しか…

五反田今昔ストーリー その二十六

さて、その正式名称「酒は天下の太平山酒造」とかいう居酒屋に通うようになったのは、くだんの新開地にはあの悲劇があったゆえに、もう行けなくなってしまったからに他ならない。 少し前にその居酒屋がちゃんと営業していることは確認済み。ごく普通の引き戸…

五反田今昔ストーリー その二十五

そしてサークルBOXにいた面々は、大いに反省するのである。ちょっとした戯れのつもりが、ちゃんとした大人にエライ苦労を掛けてしまった。そのことをわかっていながらも、その出前のおじさんは、ただその仕事をこなして、また自転車に乗って帰っていった…

五反田今昔ストーリー その二十四

そして養老の瀧のおじさんは、サークルBOXのドアをノックする。 「牛丼の出前、お持ちしました」 おじさんはごく普通に、袋から使い捨てのどんぶりに入った牛丼を四つを取り出して、ぐちゃぐちゃといろんなものが載っているテーブルのどこかに場所を見つ…

五反田今昔ストーリー その二十三

「おおい、これを見てみろ、たいへんだ」 サークルBOXは、建物の高いところにあった。 双眼鏡氏のそれで、牛丼購入者たちは代わる代わる、遠い坂の途中を眺めたのである。その先にいたのは、白い大きな袋を右手で持ち、もう一つの手で自転車のハンドルを…

五反田今昔ストーリー その二十二

さて、Tがいかに牛丼好きだったかといえば、まず三度の飯をすべて牛丼とし、さら次の食事も牛丼で可といった人物なのではあった。 自身、これを誇らしげに第四ギュードンと称していた。あるいは他に誰もいるはずもない牛丼主義者を糾合し、革命的牛丼主義者…

五反田今昔ストーリー その二十一

なぜか、頭の中で、♪暦の上ではノーベンバー♪、とGMTもどきが歌っているのだが……、というネタは、すでに使ってしまっているが、ついつい使いたくなる今日この語、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。 と、イニシエの五反田の魔宮に入り込んで、なかなか現…

五反田今昔ストーリー その二十

五反田・新開地の話の中で、ほぼ意味不明に「養老の瀧」の話が出たが、その名前の居酒屋チェーンが五反田に出店したのも、ちょうど私たちがあたりをたむろして七十年代後半であったと思う。場所は新開地の近く、目黒川に面していて、さらに数十メートルほど…

五反田今昔ストーリー その十九

さてくだんの小さな安飲み屋街、五反田・新開地だが、現在はそのよすがを感じ取ることはまったくできない。普通、古い建物が取り壊されると、別のモノが建てられる。例えば、前に触れた目黒の巨大飲み屋街全体は、今、大きな建物になっているわけなのだが、…

五反田今昔ストーリー その十八

とても長い時間のように感じられる沈黙があった後、父親は決心したように、力を込めてこういった。 「大丈夫です。覚悟はできています。先生、はっきりいってください」 それを聞いて安心したのか、先生は両親をしっかりと見つめてからいった。 「ただの酔っ…

五反田今昔ストーリー その十七

そう判断したのが早いか、その父親はHの前につかつかと近づき、そのつばきがすべてかかるようなところから、その思いのたけをすべて彼にぶつけたのだった。 「ウチの大切な息子に、なんということをしてくれたんだ!」 (いや、コートを脱がせただけだけど……

五反田今昔ストーリー その十六

Kの両親と先輩諸氏とは一度もあったことはなかった。 だからKの両親も小汚い若者たちが数人たむろしていても、それが自分の息子の友人たちと判断することを躊躇していたらしい。 そんなあいまいな関係のままに、両者の距離が短くなっていく。 (いろいろと…

五反田今昔ストーリー その十五

はい、私は現場にはいませんでした。これは伝聞を元にした錯綜、じやなくて創作です。例え似たような事象がかつて存在していたとしても、それとこれとは何の関係もありません。唐突な口上、終了。 で、続く。 H氏はかのコートをまるで自分の子どものように…

五反田今昔ストーリー その十四

ということで、彼は少しだけ残っている酒酔い気分をエネルギー源にして、殺気(いや生気か、いや違うか)みなぎる緊急救命室の手前で、看護婦さんのハサミを押しとどめたのだ。 彼は想像した。もしここに横たわる友人が目を覚まして、自慢のコートが切り刻まれ…

五反田今昔ストーリー その十三

しかし、とあるエピソードを虚実入り混じりで簡単に書こうとして、なんでこんなに長くなるのだろう。と、文才の無さをしっかし確認しつつ、救急車は夜の品川をひた走る。 その車には先輩の一人が同乗し、他のメンツはタクシーで搬送先の病院に向かうこととな…

五反田今昔ストーリー その十二

まもなく、周囲の諸先輩はコップ酒消費機械と化した同輩の異変に気付くのである。やがてその御仁は石像のように動かなくなり、視線も固まっていく。ただ口を開けて、注がれる日本酒を流し込むルーティン動作を繰り返すだけなのだ。 いつしかその顔自体も石像…

五反田今昔ストーリー その十一

新開地の楽しきひと時はあっという間に、煉獄の谷間と化していた。 日頃、飲み歩いてはいたが、その財布の健康状態から、飲み慣れることはなかった先輩諸氏だから、沸きいずる泉のように、無尽蔵に日本酒を注がれても、消費する限界はすぐに到来したのである…

五反田今昔ストーリー その十

あーあ、またぼーっと五反田界隈をふらついてしまったわいと、いっておいて、話の続き。 あの頃の貧乏学生にとって、世のおっさんたちのフトコロといえば、まさにフルジョワーそのものだったのである。もちろんたぶん五反田一リーズナブルな新開地の安飲み屋…

五反田今昔ストーリー その九

ではその五反田新開地での出来事、といっても直接見たわけではなく、のちのちの語り草になっているだけで、大したことではないので、なーんだ、といわんといてください。 さて、それでは始まり、始まり。 それは年末の慌ただしさを感じる寒い夜のこと、なぜ…

五反田今昔ストーリー その八

考えてみると(ホントに考えているのかなぁ)、学生時代に通って五反田の飲み屋というのは、数が知れている。 まずはすでに書いた坂の途中の今は無き、大力。そして五反田というよりは、ほんどと大崎広小路の大橋家(だったと思うがうろ覚え)、ここは他よりも少…

五反田今昔ストーリー その七

というわけで、飲食はとにかく基本的には自腹がいいよね。まあ、たまに友人に奢られたり、ツレにごちそうするのはもちろんありだけど、と突然文体を変えてみたりしている。 というのも、ね、会社の金や取引先の(必要以上の)接待は、食べる、飲むことの楽し…

五反田今昔ストーリー その六

あーあ、やっちまったわい、と営業氏と視線を合わせつつ、そのま白きテーブルクロスに目を傷めそうになりながら、そこに座ってしまったのでしたが、かの同僚はことここに及んでも、事態のほど理解できずにいるようで、テーブルの隅に両手を伸ばして、ウェイ…

五反田今昔ストーリー その五

同僚のその階段を昇る姿は堂々としていて、自信たっぷりな様子。まさに人生の目的そのものにまい進しているように営業担当と私には見えたのでした。 よってここが我々にはまったくふさわしくない高級フランス料理店なのではなく、街場によくある洋食屋なので…

五反田今昔ストーリー その四

その要因とは、すばり同僚である。彼はとにかく会社の金でただ飯を食うことを人生の生きがいにでもしているような御仁であって、あと少しで仕事が終わるのにも関わらず、休憩と称して「食事」の時間となるのであった。つまり休憩であれば仕事の内ということ…

五反田今昔ストーリー その三

というのも、某版元で働き出すと、作っている雑誌の校了作業を五反田にある印刷会社で行うこととなったのだ。 しかも店の位置はちょうどいいあんばい。校了日は間違いなくその店の前を通ることになる。 暮れ時、家路を急ぐサラリーマンの流れを遡り、印刷所…

五反田今昔ストーリー その二

いつだったか、よく覚えていないのだが、大学の先輩が五反田に飲み屋を構えた。その名は「かな将」。 彼は学校を卒業(したかなぁ)後に、やはり以前からアルバイトをしていた目黒の飲み屋で修業して、何年か後に、その隣の駅、五反田で店を開いたのである。…

五反田今昔ストーリー その一

昨日は母の命日。彼女がいなくなって、三度目の秋である。 ツレといっしょに、五反田の寺にお参りする。とうぜんそこはウチの菩提寺なのだが、個人的にもどうしたわけか五反田縁深い。 父や母の若い頃の職場が近くだったせいで、その界隈でよく食事をしたり…

セメダインのにおい

必要があってプラモデル用のセメダインを近くのビバホームで探した。何十年ぶりだろうか。昔はもちろんプラモデル店で買っていた。プラモデルに付いている小さなドロドロの接着剤ではなく、刷毛付きのこれを購入したときは、意味もなく先に進んだように思っ…

シンクロニシティの夜

とある原稿の校正紙をPDFで送ってもらった。それをプリントアウトして赤入れをしているのだが、さてどうやって送ろうか。ジジイはPDFの扱いがよくわからない。 で、校正の資料をひざの上に開きつつ、コピー機で赤入れをスキャンしたらどげんか、とコピ…