小松左京の裔

 小松左京さんが亡くなった。考えてみれば私は高校時代、SFぐらいしか読んでいなかったと思う。いや日本の作家に関しては、SFというより小松左京をといってもある程度は間違いはない。
 今、自分の本棚を見てきたのだが、7、8冊並んだ文庫本の中になぜか『復活の日』や『果てしなき流れの果てに』がない。もしかすると他にもない本があるかもしれない。誰かに貸してそのままなのか、忽然と姿を消したのか、その理由はわからないが、少しページを繰りたくなったので残念だ。
 特に『果てしなき流れの果てに』には驚かされた。しかしもしかするとその驚きもその年代特有のものだったのかもしれない。
 ちょっと余談だけど、短編の『アダムの裔』にも・・・・、いろいろと考えさせられた。
 きっと私は小松左京の長編によって、物語というものの壮大さへの可能性を知ったのだろう。さらに巧妙なレトリックの小気味よさを知ったのは、もちろん星新一ショートショートだった。
 ということで、小松さんは私を読むことの楽しさへ導いてくれた人の大事な一人だったのだ。
 でも不思議なもので、あの大ベストセラー『日本沈没』は読んでいないんだよね。