『騎士団長殺し』についての些細な疑問。

先日、村上春樹さんの『騎士団長殺し』を読み終えた。その中のちょっと気になる点については、すでにツイッターに載せたけど、ここではその些末的なことをさらにくわしく書いてみたい。 さて、この小説には何台かのクルマが登場している。主人公の傷心旅行で…

「佐藤泰志−死から回生への物語」について その二

その一を書いてから、はや二か月以上。続くとしておきながら、なんともみっともない状態をさらしてしまいました。 さて、佐藤泰志が最後に完成させた小説が「虹」であり、構想を完結できなかったのが連作小説『海炭市叙景』でした。しかしそれぞれ自ら選んだ…

タルコフスキー・チルドレン

さて、なんとも三か月ぶりの更新。 というのも、久方ぶりにちょいと文章なんぞを書いたので、そのご報告なのです。媒体はアトリエサードが発行している「トーキングベッズ叢書」のNo.63で、特集タイトルは「少年美のメランコリア」。おっととと、私なんぞと…

「架空の本屋」目録

ツイッターで展開した「架空の本屋」がいろいろと楽しかったので、まったくの蛇足ではありますし、すでにご存じかとも思いますが、ご紹介した四つの本屋について、簡単な説明なんぞをしておきます。その小さな萱ぶきの本屋には、重い本があればその本を負い…

そんなことも見過ごすなんて

とあるネット販売サイトにバーゲンブックという項目があって、定価の半額ぐらいで売っている。多くがハウツー本とかだが、よくよく見ると欲しいかも、といった類も混じっている。 で、いつものように調子に乗って、自分としてはの大量購入(たいしたことない…

逡巡、そして悔恨。

先日、東京ブックフェアに行ってきた(おお、フツーのブログに戻ったぞ)。 と、主だった版元の本がなななんと(の勅令)、二割引きで買えるというのだ。 で、あれも欲しい、これも買いたい、それがいいと、何店舗もさまよいつつ、めぼしい本を頭の中にインプッ…

北の想像力への極私的歩み その27

さて、天下の東海大学を冗談にも辺境の類例としてしまった失礼を謝罪しつつも、五月のイベント徘徊は、東京の密集とそこからどんどんと真空的になっていく辺境的な何かを感じさせた二日となったのではあった。 この東海大学とて、全国的には東京の大学に分類…

北の想像力への極私的歩み その26

さて東海大学でのイベントが終わり、打ち上げの会が催されるということで、私も参加させていただくことに。 場所はすでに参加者の交通の便を考えて新宿に取ってあるという。人数も多いのでキャンパスから駅まではタクシーに分乗、さらに小田急線は予約の時間…

北の想像力への極私的歩み その25

目の前に山城、じゃなかった東海大学の建物群がありつつも、さてどこから入るのか。五月とはいえ喉はすでにカラカラの状態。もし季節が違っていたら遭難していたかも、の体で遠き頂上、じゃなかった正門を目指す。 しかしここでも迷いはあった。というのも、…

北の想像力への極私的歩み その24

小田急電鉄は行く。あらかじめ調べて、メモにしていた乗り換えはすでに無効である。よって私は何度も目を細め、車内の駅案内図を確認しつつ、乗り換えブランを再構築するのだった。ガラケーで路線を確認するスキルは当然皆無。というか、そんなことをしよう…

北の想像力への極私的歩み その23

前夜の酒を脳ミソの隅に少し残しつつ、間に合うつもりで昨日に続けて出掛けたのは、東海大学文学部文芸創作学科主催による「知のコスモス・シンポジウム」というイベントで、その日の演目は「辺境の想像力―現代文学におけるへの眼差し」という。 つまりは昨…

北の想像力への極私的歩み その22

そして異形の歩行形態たる歩きスマホの障害をさけつつ、ブックファーストのイベント会場にまごつきつつも到達すれば、その空間はまさにブラックホール的都心にふさわしく、中央としての存在にはやや不釣り合いな狭さだった。 しかしまた思う。この狭さこそが…

北の想像力への極私的歩み その21

ということで、今は彼方となりにし5月23日には、すでに書いたようにブックファースト新宿店で開催された酉島さんと宮内さんと大森さんによる「わたしの東京創元社SFベスト5」に行ってきたわけだが、この書店、いままで匂わせてきたように、まさにいわ…

北の想像力への極私的歩み その20

いろいろとあって、時間がビューンと飛んでく(鉄人)、日々なわけである。 ここではまだ6月なのだが、広げに広げた大風呂敷がこごってしまって、どうにもたためない、というのではなく、ただの怠惰の文才のなさゆえなのです(ということにしておく)。 さて、…

北の想像力への極私的歩み その19

と昨日(なんてね)書いたけれど、このイベントのようすはどうやら「ミステリーズ!」のほうに掲載されるらしい。なので、いまさらぼろ雑巾のようなノー味噌をしぼるのはやめておくことにする。ごめんなさい。 さて、当日は二次会ということで、ブックファース…

北の想像力への極私的歩み その18

というわけで(どういうわけだか)、今年の話。 それも昨月の23日、私はブックファースト新宿店でさまよっていたのだった。というのもこの書店、本の配置が一般的な方眼状ではなく、まあるい島がいくつも点在していて、その壁面に本がいわばへばりついている…

北の想像力への極私的歩み その17 

そしておっかなびっくりここを開設したのが2009年の8月、その年の春に会社を辞めていて、広大なる時間的余裕に驚きつつ、こげんなもんを始めたわけだが、いまだにその他いろいろな機能についてはまったく理解していない。 まあヒマになったものだから、…

北の想像力への極私的歩み その16

さて、では私が佐々木譲さんのサイトのことを知ったのが「男の隠れ家」の記事からだったかというと、またまたあいまいのままである。もっと前からアクセスしていたような気もするし、そうでもないような気もする。 たとえばサイトでは『屈折率』という小説が…

北の想像力への極私的歩み その15

「男の隠れ家」という雑誌がある。いつもはどんな内容なのか知らないのだが、個人の本棚や古書店についての特集をよくやっている。 もう13年も前、2001年の5月号も「私の書斎時間」というタイトルで、作家さんたちの書斎を取材していた。表紙は着物姿…

北の想像力への極私的歩み その14

そして時は過ぎゆき、他のおいちゃん編集部員にもパソコンが行き渡るようになったのだが、そーなると、少しだけ前に導入していた私がにわかSE的立場となる。どだいコンピータなどまったくわからんちんなので、どうしたものかと思ったが、周囲はまったくそ…

北の想像力への極私的歩み その13

しかしモータースポーツ雑誌はF1ブームの中、まさにレースそのもののように発行までの時間の勝負になっていく。 今までの総合モータースポーツ誌ではなく、F1に特化した雑誌、それもレース後すぐにそのようすを報じる雑誌が求められていた(ような)のだ…

北の想像力への極私的歩み その12

だが転職してすぐに時代が動き、編集部門のすべてにワープロ専用機が配布されることになった。それは単機能なのにやたらとでかい据え置き型のオアシスだった。あの時代はワープロといえば富士通のオアシスといった感じだったけれど、ほかの会社だとまたニュ…

北の想像力への極私的歩み その11

二度目に佐々木譲さんとあの店でお会いしたとき、私は『ベルリン飛行指令』を持参しサインをもらった。この本こそ私にとっての「佐々木譲」体験の最初の一冊となった。 その冒頭には、60年代にF1レースに参戦していた本田技研のエンジニアたちが登場し、…

北の想像力への極私的歩み その十

そういえば、いつだったか友人Kがまだ晩聲社に勤めていた頃、彼から「ちょっとウチの本買ってくれないかな」といわれたことがある。 当時の晩聲社は、ちゃんとした本を出していて、ゆえにあまり売れないだろうと思っていたので、微力ながら応援するという意…

北の想像力への極私的歩み その九

寿郎社のことを初めて知ったのは、朝日新聞の夕刊一面に連載していた記事だったかもしれない。新・人国記だったか、あるいはニッポン人脈記だったか。これは各都道府県で活動している市井の人々を紹介することで、その「お国柄」を明らかする、という企画か…

北の想像力への極私的歩み その八

その頃だったか、もう少し後からだったか、学生時代の友人と三人で御茶ノ水や神保町あたりでよく飲んでいた。 というのも、この友人たちのYとKもいわゆる版元で仕事をしていたのだが、一番忙しいのが社会派のルポルタージュやノンフィクションを多く出版し…

北の想像力への極私的歩み その七

そのPR誌のお店紹介は外部ライターが担当していて、作家さんに電話で店についてのコメントをもらい、あとは店の取材をして記事化するという段取りになっていた。しかし数日後にそのライターから連絡が入る。 「コメントをいただこうとしたんだけど、お店を…

北の想像力への極私的歩み その六

「極私的歩み」なんていっておきながら、ちちっとも歩まないじゃん、とお思いのかたもいらっしゃるとか、いないとか。はい、遅遅たる歩みとなるでしょうが、とりあえずは始めてみましょうか。 今からざっと四半世紀ほど前の1989年、当時勤めていた広告制…

北の想像力への極私的歩み その五

いよいよ『北の想像力』が、「honto」というジュンク堂や丸善などがやっているネットショップでも販売開始。送料は無料だし、ポイントも付くし、本も重たいので、お勧めです。 ちなみに写真の買い物かごは何年か前、大阪のたこ焼き屋マーガレットでめく…

北の想像力への極私的歩み その四

昨日「やめときます」と書いたはずなのに、平野甲賀さん本の発掘、やってしまいました。 といっても大型本と文庫本は未発掘で、ただ単行本の背表紙を眺めて「これはもしかして」と思って開いて見つけたもののみ。たぶんまたまた埋もれているはず。 この写真…