リアルタイムの歴史的瞬間に映像はなかった。

 さて本日は七月の二十一日、いわずと知れた、人類は初めて他の天体である月に着陸した日である。
 あの日のことはすでに何度も書いたはずだけど、書いた本人も忘れているので、また繰り返すと、例えばあの日、その着陸の瞬間をテレビ映像で人類の何億もの人が見ていた、なんていう表現があまたある。そしても実際にそのように描いている映画もある(タイトルは忘れた)けれど、あの月着陸船イーグルの窓から月の表面に接近し、そしてランディングする映像は、リアルタイムで放映はされていない。テレビを観ていた人は、ただその音声とそして管制センターのスクリーン上に動く無骨な着陸船のイラストを眺めていただけなのだ。
 歴史はちゃんと受け継がないと、うっかりミスを生じる。なかったことがあったことに、あったことがなかったことに。月着陸船のたぐいならば、まあいいけど、世の中、まあいいことだけとは限らないからね。