近隣に朋ありて

朋あり近隣より来る、それもまた楽しからずや
右手をひょいと挙げ、ヨッと声をかけ、
いつもの店の、いつもの席で、いつもの酒に、いつもの肴を食す、
そしていつもの話もまた格別なり、
ビール一杯に、あとはレモンサワーに歳月の重なりを感じつつ、
その日々もまた我らが財なり、
同じ椅子に限られた時間あれば、
別の椅子を求めて夜を往き、ひとつだけ馴染みの灯を目指す、
くぐれば新たな光もまた充ちる、
更けて家人に連絡の私の愚に、
友は花にて応えたる、
家路にてふた駅だけの花束に、僅かな酔いもまた心地よし

友人が近くから来る(故事には「遠方より」なのだが近くにいるんだからしょうがない)のもまた楽しいものだ。簡単な挨拶を終えればいつもの店で飲んでは食べる。いつもと同じような話もまたいい。最初はビールであとはサワーというのは歳を取った証拠だが、そんな日々の積み重ねも財産ではないだろうか。同じ店に長居は無用で、一軒だけの馴染みの店に向かえばまた気分も違ってくる。ちょっと時間が経ったので家に電話入れるなんて野暮なことだが、友達は家人に花束を贈ることで返してくれる。帰り道は二駅だけで花束を持っていてもあまり恥ずかしくはない。少し酔っているからなおさらで、心地いい気分にさえなってくる。