近づき難い花々

数日前のこと。散歩の途中で近くの土手にさしかかると、目に赤いものが飛び込んできた。少し不思議に思ったあと、それが彼岸花であることに気がついた。
 荒川のこのあたりの土手は毎年今頃に草が刈られる。この日の土手は刈られた雑草がまだ放置された状態なのだが、彼岸花はその下から芽生えたようだ。咲いている幅は50メートルほどで、見える範囲で咲いている場所はそこしかない。どうしてここだけ咲いているのかは不明だ。
 花はすでに盛りを過ぎていて、曇り空だったせいか美しいとは思わなかった。それよりもなんともいえない近づき難さがある。ニュースでは彼岸花を花束にしている場面がよくあるが、それには違和感をもつ。彼岸花はただ観るだけでよく、あまり手に触れてはいけないような気がするのだ。事実、調べてみるとその一部に毒があるのだという。
 この土手は例年ならばあと少しで野焼きが行なわれる。その頃はもう花を落としているが、地下の球根はじっと次のお彼岸を待ちわびることになるのだろう。