月食の夜に

 今晩は部分月食だということを知ってはいたのだけれど、出先でしっかり忘れて、帰りのクルマの中でふと気づき、もうその時間だと窓の外を見回すけれど、月らしきものは見当たらない。
 部分月食は満月の夜に起きる。太陽と地球と月が一直線に並び、地球の影に月が入る現象が月食だから当然だ。しかし同じ「食」といっても、日食と月食ではかなりニュアンスが違う。日食は太陽の前に、月が直接入ってしまうのだから、月が地球の影に入るのとは、わけが違う。
 しかし、太陽と月が地球から見て、その見た目の大きさがほとんど同じというのも不思議なものである。
 と、ダラダラ書いてもしょうがないが、家に帰ってきて、空を見上げると、半分以上が薄い雲に覆われている。でも月があるべき位置がそこからは確認できない。マンション住まいゆえ、また外に出てそちらの方向を確認するのは手間である。かくして今回の部分月食を眺めるのは諦めることにした。
 さて、月食で一番の思い出といえば、高校時代の観測である。一年先輩が天体写真の名手で、彼が連続写真を撮るのを手伝ったのだ。「天文ガイド」に投稿したその写真は、首尾よく掲載された。
 でも私がその夜に撮ったのは、真っ暗な中でみんなを集めての記念写真だった。2分ぐらい露光して、私はわざと1分ぐらい抜けた。結果、私の身体は半透明になり、屋上のフェンスが透けて見えていた。
★写真の月食とはまったく関係のない上弦の月。近くの工場の煙突と組み合わせてみました。