カークご紹介のホンのとばくち

●WE FREE KINGS/1961
●VOLUTEERED SLAVERY/1969
ROLAND KIRK

 小生がマニアック的といっていいほどにイチ押しなのが、ローランド・カーク。三本もの楽器をいっぺんに口にくわえ、しかもサーキュレーションなる技により、気の遠くなるほど長くそれを吹き続ける能力の持ち主です。また口で唸りながら、鼻でフルートやホイスッルを鳴らす。首からはおびただしい楽器や道具、そして訳の分からないものをぶら下げる。この姿はまさにフリークと呼ぶべきもの。
 しかし、彼のかもし出す音に、しっかりと耳を傾ければ、それは奇跡の浸透圧を持つかのように皮膚をすり抜けて、ゆっくりと心の部位まで到達してしまうのです。勝手に命名したのは「ひとり民族音楽」。そう、カークというひとりだけの民族が醸し出す原初的なフレーズやリズムは感性というよりも、快感に響くのです。それはもう、ジャズというジャンルでは語り切れない深さを持っています。
  まずは「ウイ・フリー・キングス」で、メロディメーカーとしての彼を堪能してください。また「ヴォランティアード・スレイヴリー」はバート・バカラックやステービィ・ワンダーなどのポップチューンを、彼なりの解釈で取り上げています。オリジナルよりもアクテッブなその演奏は、そのヒット曲という存在を離れて、カークの曲そのものになっています。
 なお、前者と同様の作品に、「DOMINO」が。後者と同様の作品には、「BLACKNUSS」があります。彼は2歳のときに医療事故が原因で失明し、そのせいか、作品にはピンポンの音や、馬が疾走する音などが挿入されています。また黒人ミュージシャンによる黒人の地位向上運動にも参加しました。目の見えない彼にとって、白と黒の違いで色々とあるなんて、不思議でしょうがなかったに違いありません。なお「ヴォランティアード・スレイヴリー」は、クレジットされていませんがウイ・シャル・オーバー・カムで終わります。
 今回はあまりにサラリとした紹介だったけれど、また機会をみて、彼の真髄をきちんと書いてみたいなぁ。