「試し」運転

　某日、某駅で列車を待つ。
　すると到着時間でもないのに、入線するという放送が流れる。通過列車かと思ったが減速しているので、停車するようだ。
　ふと見ると車体に試運転の電光表示が。もちろん中にはひとりの客も乗ってはいない。
　そんな列車を眺めていると、ホームにいる客の多くが乗ろうとしてドアに近づいていく。そしてドアが開かないことで、初めてそれが試運転であること気付いたようだった。
　その路線は列車の本数が少ないので、客はそれぞれ到着時間を確認しているように思えるし、入ってきた列車に客は見えないし、ちゃんと試運転である表示がされているのに、人は条件反射のように、ドアの近くまでいって開くのを待つ。
　まあ、私も人のことをとやかくいえたモノではないのだけれど、その光景にちょっと寒さを感じたのでした。