はい、削っていきます。

 先生が画いたのは、まず断面図である。ポッコリとして丸い山、これがホクロなんだな。
 「これをね。上の方から少しずつ削っていきます。それできれいに取れたら、終わりです。でもね」
 といいつつ、先生は今度は黒々とした俯瞰図を画く。
 「さっきの頭から削っていく方法で、ダメな場合はこのように切れ目を入れてしまいます」
 先生の入れた線は、ホクロを瞳にした眼のような感じ。
 「こう切ったあと、ホクロを取って、あとは針で傷を縫っていきます」
 これはちょっとヤバイ。顔を縫うんだよ。
 「でもコレは前のが駄目だったときだけです。前から後にはやれるけど、後から前にはできません。つまりやると決まったら、前の削っていくやり方から始めることになります」
 私は唾を飲み込んだ。うーむ、痛いのかなぁ。
 「やりますか」
 先生はまた確認した。私も男の子だ。かなりくたびれているけれど、ここで「やっぱりやめます」なんてことは、絶対にいえない(とブログには書いておこう)。
 「はい、やりましょうか」
 「じゃ、予約を入れましょうか。今度の金曜日、午後はいかかですか」
「それじゃ、午後1時ということで・・・」
 そんな感じで私の皮膚科に於ける二度目の「手術」が決まった。でもこの「治療」が手術だったのは、あとで知ったのだ。
 その日の会計を終って、領収書といっしょに次の予定が書かれた紙をもらうのだが、そこにはしっかり、××先生(手術)と記入されていた。またあの手術室に行くのか。ということは、あのマスク美人の看護師さんにも会えるのかな。
 そんな夢想は当然のことながら、完膚なきまでに打ち壊されるのだった。