鉛筆には反応しません

(昨日の続き)
 そして本日、皮膚科の最終確認に病院へと向う。もうポツリポツリと二ヶ月も通っていることになる。
 予約時間の少し前に自動受付機に診察カードを入れる。スムースに受付。前にも書いたけれど、受付機からは、小ぶりのヨーカンのような機械が出てきて、そのディスプレイに私の名前と診察予定時間が表示されている。そろそろという時間には「診察科の近くにいてください」、診察時間には「何番の診察室にお入りください」という表示が出ていることをチャイムが教えてくれるので、たいへん待ちやすい病院なのだ。
 しかし年配の方は、どうもこのシステムに慣れないらしく、ちゃんと受付機の前に「専任」(?)の係員が立っているのだ。
 「おかしいなぁ、先生がちゃんと診察時間の変更を鉛筆で書いてくれたのに、機械が受け付けません」
 「あっ、もう受付時間が過ぎていますね。たぶん先生の処理がうまくいってなかったのでしょう。手続きをしますから、どうぞこちらへ」
 「しかし、先生が書いてくれたんですよ。時間の変更をしますって」
 「ですから、それが反映されていなかったんですね。診察は受けられますので、こちらへどうぞ」
 「でも私の前で、見えるように先生が書いてくれたんですけどね・・」
 「ですから、鉛筆書きには・・・・」
 といった按配である。
 2階へ上がると、皮膚科の前の椅子はほとんど埋まっていたので、となりの小児科の前に座る。こちらはガラ隙きだった。
 やがて、あまり待つこともなく診察室へ。実家の近くにこんな病院があれば、母もあんなに苦労しなくても済んだものをと、自分だけの利便性がちょっと悔しい。
 ドアを開けて、あの相棒の鑑識に似た先生とご対面(あっ、名前を調べておくのを忘れていた)。
 実をいうと、この先生は私にも似ているところがある。先日、父のところに行った際に、ちょうどテレビに「相棒」が映っていたので、
 「いま受診している先生に、あの鑑識が似ているよ」と話したら、
 「ああ、お前にそっくりだ」といわれてしまった。違うって。
 先生は私の顔を見て、
 「あっ、どうもこんにちは」というなり、鼻の横を凝視する。そう、かなりいい感じで直っているのだ。
 「ほんと、すごくいいですよ。もう大丈夫。検査の方も問題なしです」
 とのことだった。で、先日の疑問を聞いてみた。
 「ホクロを取ったときの機械って、電気メスですか、それともレーザーなんですか」
 「あっ、あれね。あれは電気メスです。レーザーだと深さが調整できないんですよ。ほらレーザー銃だって、どんどん奥まで届いちゃうでしょ。でも電気だと表面しか作用しませんから、安心なんです」
 「すると、腰にあてていた板みないなものは、電極だったんですか」
 「そうそう、それで電気を通すわけですよ」
 つまりジジジジとクサヤを焼いていたとき、私の身体に電気が流れていたということなのか。
 そういった感じで、たぶん最後の受診も終了。
 私がお礼をいって立ち去さろうとしているときに、看護師さんが先生に相談している。
 「初診なんですけれど、火傷の患者さんがみえてます。どうしましょうか」
 予約の隙間に入れるかどうかということなのだろうか。確かに私の診察時間は通常よりも短かったはず、それでも全体の予定時間よりは、ずれ込んでいる。先生の返答は聞こえなかったが、たぶん本来は最後に回されてしまうはずの火傷の患者を診たのではなかろうか。なぜなら、ここの先生は、看護師さんに頭が上がらないのだから、もちろんいい意味でね。