『大聖堂』に火がついた。

 海外ドラマの『大聖堂』を観た。ちなみに原作の方は、「中」の400ページぐらいまで読み進んでいる。
 で、このドラマ、なかなかの迫力なのだけれど、1時間弱の第1回の展開は、もっと膨大なドラマのダイジェスト版のような感じだった。エピソードがどんどん先に進んでしまい、原作にある登場人物の心情のありようは表現されてはいない。原作を読んでいるので、どうにか流れを掴めるが、ドラマから入る人はちょっと難しいだろう。だから独自の編集でもいいから、時代背景とか登場人物の説明などを挟んだ方がいいと思う。
 ドラマは原作に忠実に王の世継ぎを乗せた船の難破のシーンから始まる。でもその生き残りがいたということをこの第1回目で触れてしまっている。まだ私は途中までしか読んでいないのだが、そのあたりはこれ以降に出てくるのだろうか。
 また原作では詳らかでない司教や国王の死の原因が、ドラマでは毒殺であり、その犯人まで明らかにされている。ドラマとしては悪役側を際立たせたいからだろうか。
 さらに原作ではトム一家の豚を盗んだ人物は殺されているが、ドラマでは彼らの赤ん坊を教会に届けて育てる役になっている。これは物語を簡略化するためだろうが、フィリップ院長とフランシスの幼い頃の話や最初の「分院」での出来事などが割愛されているので、フィリップが修道院の院長になるのが唐突のように感じる。
 また遠景のシーンがほとんどないので、迫力がありながらも、ちまちました印象になってしまっている。そんな点は原作の作り出す風景とだいぶ違っている。
 と、いろいろとヤジを飛ばしてみたが、このドラマは原作を読んでいる人にとっては、そのイメージした情景をさらに緻密にさせてくれるのだ。その効用はドラマでは描かれていない部分にもしっかりと効くわけだから、原作をさらに理解する手助けとなる。まさにこれからの展開は興味深いモノなのだけれど、本当は全8回などではなく、30回とかで描ききって欲しかった。
 ということで、これから毎週土曜の夜は『デカワンコ』に引き続き、テレビにかじりつくことになるだろう。
 ところで、このドラマの原作を読み始めた頃から、自分はほんとうに中世のことを知らないことに改めて気付いた。そこで、かなり前に買ってあった「ライフ人間世界史4 信仰の時代」のホコリを掃ってみる。
 で、驚いたのが序文、しかも出だしの三行めに「この時代が生み出したもっとも印象的な記念物は大聖堂であったし、・・・」とあり、さらに次の見開きは、欧州各国の大聖堂の位置を示した地図だったのだ。ページを捲ると修道院の生活や大聖堂の構造などにも相当の分量を割いている。もしかすると、ケン・フォレットはこの本を読んでいるんじゃないかな、なんて思うほどに。はい、この本もじっくりと読んでみることにしょう。
 むむ、中世史のお勉強にチト、火がついてしまったようだ。


 ところで、「近くの旅客」はこのあと、まだ続きます。