三人目のラーラ

 いよいよロシア版の映画『ドクトル・ジバゴ』のDVDが発売されるようだ。パステルナーク原作のこの作品は今までも何度か映像化されている。ジュリー・クリスティがラーラ役のハリウッド版はいわば原作のダイジェスト。映画それ自体はなかなか良いのだけれどもね。
 近年、キーラ・ナイトレイがラーラを演じるBBC版も制作されているけれど、入手できるのはそれを短く編集し直したもののようで、展開はハリウッド版とあまり変わりはない。
 しかし今回の作品は何んとDVD6枚もの大作となるのだから、原作をそれなりにフォローしていると期待してしまうことにしよう。
 それになにより出演者に注目だ。まずはニキータ・ミハイルコフの看板役者であるオレグ・メンシコフ。『太陽に灼かれて』ではいい味だしてたし、『シベリアの理髪師』では多芸なところを披露してくれた。
 しかしそれよりもうれしいのは、オレグ・ヤンコフスキーが出ているという話だ。彼はタルコフスキーの『鏡』で、出番は少ないけれども重要な父親役、そして『ノスタルジア』では主役を演じている、あの彼なのである。さてどんな味に老けているのだろうか。
 だが一番うれしいのはラーラ役があのチュルパン・ハマートワだということ。『グッバイ、レーニン』のコケテッシュな留学生看護婦役はチャーミングだったし、ファンタジックな『ツバル』では見事なヌードを堪能させてくれた。『ルナ・パパ』でのコミカルな動作、『コマーシャルマン』の初々しさ、さらには『72M』では悲しみを秘めた表情がスクリーン(ほんとはテレビ画面だけど)に広がった。そんな彼女がどんなラーラを演じてくれるのか。大いに楽しみなのだ。
 それにしてもあのパステルナークの作品がロシアで制作されるなんて、彼自身だってたぶん想像したことはなかっただろう。夢には見たかもしれないけれど。