6月15日という日に

 報道によると、大江健三郎さんや澤地久枝さん、坂本龍一さん、そして鎌田慧さんらが呼びかけ人となって、脱原発に向けての集会と1000万人の署名活動に乗り出すという。
 この報道に接して、30年ほど前の「反核・文学者の会」を思い出す。この名称で正しいかどうかわからないのだが、その最初の催しに、私は一般観客として参加していた。前の方に友人と座ると、その一列前に何人かがやってきて席に着いた。私のすぐ前の人の耳はずいぶんと大きなぁ、と思っていたら、大江健三郎さんだった。
 当時はベトナム戦争こそ終わっていたが、世界はまだ東西に分かれ小国に対する自分の陣地への勧誘合戦に血眼になっていた。結果、ヨーロッパへの新ミサイルの配備だとか、シーレーンの防護とか、トマホークに核弾頭を載せるといった極めてきな臭いニュースが流れていた。そんな中での「文学者の動き」だった。もちろん他にもいろんな人がさまざまに動いていた。そんなことがあったので、今度もまた誰かが動いてくれるだろうと期待していた。
 まず最初に口を開いてくれたのは村上春樹さんだった。ユーチューブで彼の声を久しぶりに聞く。ちょっと変わったイントネーションだ。あがっていたのかもしれない。スペインの地からのメッセージという点が彼なりのセンスなのだろう。
 そして大江さんも動いた。ほんとうはもっと若い人の役目なのだろうけれども、それはこれからの展開の中で見つけられるかもしれない。
 奇しくも今日は6月15日。51年前、一人の女性が国会の構内で殺された日である。