41年ぶりの再会

 (昨日の続き)
 昨日つらつらと取り上げたラジオドラマ以外に、もうひとつ「ガーン」と響いた作品がある。しかし長い間、その作品名も作者も分からないままだった。
 突然、主人公に仕える召使が現れる。彼は何か用事を申し付けて欲しいと主人公に迫る。適当なことを頼むが召使はすぐにそれを済ませてしまい、また主人公に次の用事を聞きにくる。いいかげん面倒くさくなったので、すべてを破壊して欲しいと頼む。すると召使はそれを実行する。あとには何もない暗闇に主人公の意識だけが浮かんでいた。こんなストーリーで、FMではなく中波のNHK第1で聴いたように思う。当時としては、この意識だけが宙に浮いているという表現がとても衝撃的だった。
 そのドラマのことを知ろうと期待して、『推理SFドラマの60年』を読んでいたわけではなかったのだけど、「仕事下さい」という文字を見た瞬間にそれがあのラジオドラマのタイトルであることがわかった。
 本によると、1970年1月25日の日曜日、午後10時15分から11時までの放送で、眉村卓の作だということである。
 早速ネットで調べてみると、この作品は小説として発表されていることがわかった。それが1966年7月号の「SFマガジン」。高校生ぐらいから、年に一冊か二冊を買う程度の薄弱SFファンではあったが、さすがに小学生時代のモノは手元にはないな、と思ったが、そうそう、3年ぐらい前に仕事帰りの古本屋の店先で、ずらりと並んだ古い「SFマガジン」を一冊100円かそこらで、まとめて買ったことがあったはず、でもそれも揃いではないし、などと思いつつも本棚に向かうと、三冊だけあった1966年刊のうちの一冊が7月号だったのだ。こんなに近くにそれがあったとは。
 ということで、「仕事下さい」(原作では「仕事ください」)とは41年ぶりの再会である。