すでに少数派かな。

 『ザ・ムーン』というアポロ計画に関するドキュメンタリー映画を観た。テレビなどではあまりお目にかかれない当時の映像と、宇宙飛行士のインタビューで構成されている、なんとイギリス制作の2007年の作品だ。11号のコリンズさんとオルドリンさんはいい味を出している。
 前にも映画『オーバー・ザ・ムーン』のことで触れたけれど、やはり11号の月着陸の瞬間の同時中継はなかったみたいだね。ヒューストンの管制センターの映像も、ただ図表の上をイラストの着陸船と司令船がピコピコと動いているだけだった。
 ただ困ったことに、この見事にスペシャルな映像の説明が極めて簡素、もっといってしまえばほとんどないのだ。
 例えばアポロ宇宙船が、サターンロケットから切り離されて月へ向かうところをロケットの側から撮っているような場面がある。作品の流れからすればまさにそういった展開のはずで、宇宙船は一つのノズルを噴かして漆黒の闇の中に飛んでいく。
 うーんこんなの初めて!ステキ!!なのだが、だとすると指令船&機械船は、着陸船を引き出すために戻ってこなくてはならない。でもそれは飛んだきりのまま。さらにカメラのある場所は周りが花びらのように開かなくてはならないのだが、その気配もなく、宇宙に開かれた円形の部分に地球が入り込む。つまりゆっくりと落下している。
 で、ここでやって気づく。これは司令船と機械船を写したものではなくて、サターンの2段目から3段目が切り離される場面なのだ。
 回りくどい説明で恐縮だけど、たぶんこの作品を観たほとんどの人は、いやもしかすると制作した人もあの場面を誤解しているんではなかろうか。
 うーん、きっちりと残すためにもこの辺は間違いのないように作ってもらいたい。
 ちなみに偶然にもアポロ11号の三人はみんな1930年生まれだという。この作品の制作当時は77歳、そして現在は81歳だ。月に足跡を残した人類がいなくなってしまう日も遠い日ではないようだ。人間がいる月を見上げた記憶が私には鮮明に残っている。そんな人類も今では少数派になってしまったんだろうな。