映画界は「大戦略」が大好きさ

 数日前、中学時代からの友人宅に飲みに行く。
 「三つ子の魂、百まで」ではないが、当時からドイツ軍の意匠大好き少年だった彼の趣向は未だ変わらず、心優しき理解者である私を、彼が集めまくったミニチュアが迎えてくれる。
 彼の家族は妻と娘が二人。まあ彼の趣味は永遠に理解されることはないだろう。普段はこんなに広げることはできないんだ、と彼はいう。確かに土色をした戦闘機や戦車の模型は家族にとって泥のかたまりのようなものに違いない。食卓の近くにあるべきではないということだろう。しかし当日はとりあえず女子軍の三人は出掛けている。
 もちろんテレビ画面にはBGVとして戦争映画が流れている。
 うーむ、地上戦の様子などが映し出されているので、私は「バルジ大作戦」とか「レマゲン鉄橋」とか「ダンケルク」などといい加減に映画タイトルを当てようとするが、まったくの見当違い。そうこうしている間に「バトル・オブ・ブリテン」と英文の題名が出てしまった。地上戦の映画かと思ったら大間違い。日本でのタイトルは、そう『空軍大戦略』(こういったタイトルなんとかならんのか)である。
 これは(たぶん)第2次大戦時、イギリス本土をドイツ軍機による爆撃や攻撃を守ろうとするイギリス軍の活躍の映画で、ドイツ軍びいきの彼にとっては忸怩たる内容のはず。
 ところが穏健的ドイツファンはこういうのだった。
 「ドイツ軍っていったらいつも悪者じゃん。でもこの映画はチャンとドイツの側も描いてくれているだよ。こんな作品はホント珍しいんだ」
 史実の結末は明確である。勝利に酔うというシーンが基本的にありえないドイツの映画界は、戦争がもたらした数多くの悲劇のうちの一つなのかもしれない。
 今回はずっとBGVだったので、まったく内容を把握していない。前に観たのは何十年も前のこと。幸いなことに私の録画リストにこの映画があったので、時間ができたら観ることにしよう。ただしツレはきっと嫌がるだろうなぁ。