近くにいた値切りの名人

 一昨日の日曜日は前日の雨降りとはうってかわって快晴に恵まれた。ということで、ツレといっしょに鬼子母神の手作り市と古本市に出掛けてみることにした。
 しかし何事にもスローモーな我々のこと、現地に着いたのはすでに2時を過ぎている。でも市は4時までしかやっていないのだ。
 だがもともと買い物が大好きなツレのこと、手作り市の入り口近くの出店からすでに食いつき始めている。とにかく時間がないから、まず一周して様子を見ることに、という私の提案に従うらしいので先を急ぐと、やはり途中で見失う。そして振り返れば遥か後方で何事もなかったかのように帽子の出店の男の子と談笑しているではないか。
 ツレが買い物をするときはレジに行ってからも時間が掛かる。何か一言二言でも話をしたいという性分らしいが、今回はレジの前に値切りをしている。さらに付いているブローチを他のものに代えて欲しいともいっている。まあこれは特技の部類に入るだろう。
 なんやかんやでちゃんと見ることは諦めて、1時間ほど手作り市を流すと、こんどは古本市へと向かう。
 しかし残り時間はやっぱり1時間、こちらでもじっくり見ていく余裕はないので、さらりと見ていく。そもそも私は、すでに自分の人生の残り時間では消費できないほど本を買ってしまったと自覚しているので、「いいなぁ」と思うぐらいでは買わないことにしている。でもやっぱり「すごくいいなぁ」に出会ってしまうことがよくある。困ったことだ。
 だから今回はツレの好きそうな本にターゲットを絞ることにした。これは本好きの精神衛生上も好ましい選択ではなかろうか。
 で、京都のガイドブックを見つけてツレに渡すと、やはり値切ってオマケまでもらう。彼女の好きなパン屋の本があったのでツレに見せると、もちろん値切る。さらに向田邦子さんの関係書を差し出すと、これも値切る。そしていつしかどこかの出店のオバサンと京都談義に花を咲かせている。それを遠くで見ながら、私は文学雑誌を当然のことながら言い値で買っていた。ツレをここまで呼ぶにはチト遠過ぎるのだ。