カークの雄たけびが荻窪の響く。

 (昨日の続き)
 ということなので、ささま書店で小一時間ほど潰す。いゃーあ、いい本がいっぱいだけど、ここでまた書き出すとそれだけで終わってしまいそうなので、別の機会に。
 そうこうしているうちに、7時はしっかりとやってくる。「あっそう、来たんだね」という感じで、またまたベルベットサンへとマイル。
 そこそこ開場時間から過ぎていたけれど、椅子に座った人はまだ2名ぐらい。客が語り手よりも少ない場合は、こっちがしゃべることになるかも、などと失礼な妄想に浸っていると、調子ドアが開いて、人が入ってくる。
 とにもかくにも、田中さんに「昨日はどうも・・・」とごあいさつ。そして7時30分を少し過ぎたあたりで、いよいよ「聴いたら危険ジャズ入門」と題したフリージャズの禁断の扉が開かれる。
 なんとドア・ツウ・ドアで40分ほどの場所なのに、ウチを出てからナント2時間40分も経っていたのだった。うー、足が冷たい。
 まずはローランド・カークの映像が流れる。これはもう見世物です。
 演奏そのものが見事にショーアップされている。さらにすごいのは、これを目が見えないカークがやっているということ。
 一つ一つの動作のテンポのよさ、間の素晴らしさを感じる。椅子をステージに叩きつけて壊す場面も、小気味いいぐらいに音楽に似合っているのだ。
 私はカークをフリージャズとは思っていなかった。まあジャンルはどうでもいいのだけれど、ジャズどころか一人民族音楽だ、といったこともある。カークひとりだけの民族の音楽、その形相も含めて、あれは少なくともジャズを超えていると思う。
 さらにサン・ラの伊達姿にドギモを抜かれ、エリントンの不思議に茶目っ気に驚き、ドルフィの技量の深さに感銘する。
 そしてはたまた田中さんのコメント、ドルフィは名前がいい。そしてまつげがいい、なるほどなるほど。私は思う、カークはうめき声がいい。
 かくして荻窪の夜は更けていく。10時半にイベントは終了。でも会場ではこれから何やらありそうなのだけれど、終電の関係で帰らざるを得ない。
 そんな私の背中に、カークの「ワッハッハハ」という声が被さってきそうな夜だった。