排水パイプ越しのデーヤモンド

 「ちくしょう、晴れているじゃないか」
 あれだけ天気予報で「明日の朝は曇りです」と連呼されてて、淡い期待などどこかへ飛んでいってしまう。でも空はどんよりとした雲ではなく、ところどころに薄い雲を用意しただけだった。
 昨晩は何も準備をしていなかったから、慌ててその辺にあったボール紙に小さな穴を開けた。ピンホールカメラの原理である。とここで原理と書いておきながら、その原理がなんたるかは、まったく理解していない。でもそんなことを考える余裕もなく、東側の窓を開く。涼しい風が部屋を通り抜けた。
 白い箱の蓋に、黒い影が四角くくなるように調整すると、すでに三日月状になった太陽が、小さな点となって現れる。
 でもどうもチンケだ。やっぱり遮光フィルターを探しおけばよかった。望遠鏡は小さいものが手の届く場所にある。でもそうか赤道儀ではないので、方向を定める間に蝕は終わってしまうだろうな。
 そんなことを思いつつ、ふと上下に伸びた雨水の排水ハイプの向こうに隠れるような角度で、太陽を見てみた。よい子の皆さんはマネをしないでください。
 そうすると、アラ不思議、ちょうど太陽があるあたりの排水パイプ裏に、あまり眩しくない太陽が蝕の状態そのままに見えるではないか。
 うーむ、どうしてだかはわからないが、実際にそうなったのだ。二枚を重ねた窓ガラス越しだったので、その窓(やや汚い)に太陽の光の一部が反射して、もう一枚のガラスの映ったものを見たのだろうか。
 つまり直接眼球にやってくる光は、そのパイプによって遮断されているが、そうではない角度の光が、まず二枚のガラスの自分側で一部を反射させて、それが太陽側のガラスにもまた一部が映ったのではないだろうか。そしてこの間に適度に減光されたので、目で見ても問題がなかったことになる。これはあくまでもいま考えついた仮説なので、繰り返すけど、よいこの皆さんはマネしないでくださいね。
 実際にこうすれば、もっとよく見えるよ、といってツレに試させたけれど、一瞬にして強烈な残像を網膜に残しただけだったから。