盆の鈴の音

 盆の送り、実家に行く。
 前日妹が来てくれたので、郵便物もほとんどない。部屋の空気のよどみもない。
 雨戸を開けると、小さな庭に小さな風が吹いている。
 そして、チリリン、チリリンと鈴の音。
 どこかの子どものカバンにつけたそれか、そこらのおばさんのサイフについたそれなのか。でも誰も歩いていない。
 耳を澄ますまでもなく、また風がひと吹きすると、チリリン、チリリン。
 鈴の音はこぎ手を失った自転車の方から微かに聞こえてくる。
 チリリン、チリリン。
 付けたままのそのカギに付けたままの鈴が、風に揺れている。
 来てくれたのかい。チリリン。
 線香をつけて、1時間ほどテレビの前でまどろむ。テレビの音の隙間に鈴の音が聞こえたような。
 そして雨戸を閉める。もう風は止んでいる。
 ありがとう、早くお帰り。チリリン。