私は沿道掃除屋さん♪

 そういえば、かなり昔の話だけれど、新宿で友人と飲んでの帰りに東口のターミナルあたりでロックバンドの演奏を目撃したことがある。かなりいい感じのバンドだったので(酔っ払っていたからかもしれないれど)、ちょっと立ち止まって聴いていると、どこからか現れ出でたる警官たちが、そのバンドを解散させようとしだした。バンドのメンバーは少し抵抗して、聴衆も酔っ払いが多かったからか、弱弱しくも返れコールが起こるが、やはりバンドは大人だったと見えて、彼らはやがて楽器を片づけ始めた。
 私が聞いたのか、それとも別の誰かが聞いたかは忘れたけど、なぜ解散させるのだ、という問いに警官は「通報があったんですよ」と答える。ええっ、こんな人家も何にもない繁華街で、騒音も何もあったもんじゃない、と思ったけど、ロック嫌いの誰かが、警察に通報することが絶対ないとはいい切れない。
 また別の日、やはり友人と飲んだ帰り、今度はゴールデン街近くの靖国通りで屋台のたこ焼きを買って、ガードレールにでも座って食べていると、またまた踊り出でたる警官たちが、グルリと屋台を囲んで何やら因縁(いや違います何かの質問)をつけている。やはり観客が我々二人だけだと、役者も自らの力量はいかんなく発揮するようだ。
 われわれの「もっとたこ焼きが食べたいんだよ」という抗議の声もむなしく、屋台のおじさんと屋台そのものが新宿警察署に連行されていった。これもやはり通報の顛末なのだろうか。きっとたこ焼きが嫌いなお好み焼原理主義者が電話したに違いない。
 このようにして美しい環境を創造するために、猥雑ながらも素敵な音楽やいかがわしくもおいしい食べ物は排除されていく。残るはどこかのお墨付きの何かだけなのだ。