土星を食す夕べ

 そんなサージェントな日々(意味不明)の頃か、あるいは少し前に、小説のようなものを大学ノートに徹夜で綴ったことがある。その舞台もまた上野公園、というか上野の国立科学博物館だった。考えれてみればその公園の周辺に並び立つ多くの建物の中で、当時入ったことがあるのはその科学博物館だけだった。
 主人公はとある夕刻、今は無くなってしまった博物館動物園駅に到着する。その日は科学博物館の屋上にある天文台で、土星食の観測会が開かれるのだ。そこで主人公の彼は、ややおきまりだが少し年上の少女と出会う。年上なのに少女って何かヘンだけど。そして土星食(月の向こうに土星が隠れる現象)が始まる少し前、彼の胸のうちである変化が起こる。それが月に隠れ、そしてまた闇からポッと現れる土星に擬して、確信となる。
 さて、その少女とやらは、どこぞの古いビルの屋上に建てられたペントハウスに住んでいるが、結末をいってしまうと、彼女はそのビルから落下する。
 たぶんもう見つからないその40年ぐらい前のそのノート、もし出てきたとしても恥ずかしくて開けないだろうけれど、彼女をロボットにしておけば、先見の明も少しはあったかも、とふと思う、今日この頃なのではあった。
(続く)