絵画の前の光と客

 で、ベーコン展を見てきたときの印象を、今更ながらにかき集めると、まず静謐な空気が思い浮かぶ。
 静謐などというワープロがなければ使うことがない言葉を、このブログでは便利に何度も用いてきたけれど、これほどまでにベーコンの絵画そのもの、その題材、さらにいえば彼のアトリエなどなどと不似合な言葉もまたないだろう。
 でもきっとこのことは、それがいい表現、的確な言い方であるかどうかは別にして、その絵とそれが並べられた空間を観てきた人には、どうにか頷いてもらえるのではないだろうか、と思う、ことにしよう。
 ここで空気とも書いたけれど、これはその会場の光の具合、そしてなにより客の数とその傾向によって成り立っているようだ。もしこれが、そのあと、むりくりに行った「ラファエロ展」と同様の光と客であれば、そうはいえなかったと確信を持って断言できる。
 その光と客の「混合物」として展示会場はある。