絵の向こう側

 くどくもベーコンの続き。
 濃紺バックの何枚かの絵を通り過ぎると、やや広いところに出て、今度はアクロバティックな展開が始まる。画面は明るく、しかしかなりグロテスクでありながらも、予習してきたからなのか、どうもポップアートの匂いを感じてしまうのだ。
 ベーコンの印刷された絵を観てきたことでいうと、ほんとうは思わず、手で口を抑えて吐き気を堪えるぐらいに刺激的なはずなのだが、今回の展示会はそのあたりが抑制させているのかもしれない。
 ベーコンの絵は、絵そのものと対峙すると同時に、不十分ではありながらも、その絵を描く精神のありようにも対峙することになる。その点からはこの程度の刺激度でも十分で、もしかすると出入口で救急車のお世話になっていた人にとっては、十分以上だったという可能性も否定できない。