家の記憶 九

 夏休みともなると、伯母の家で何日も過ごすことになるのだが、小学生はやはりおばけがこわいのである。いつだがいつも観ている子ども向けのドラマがなぜかその日は怪談もので、みんながテレビを眺めている三十分間、私はずっと視線を逆にして、みんなの顔だけを見て過ごした。それでも聴こえてくる音や声は私を恐怖の底に叩き込む。それほど当時は想像力が豊かだったんだね、ということにしておこう。
 その晩は従兄の部屋で寝ることになっていたのだが、彼がトイレに立つときは、いっしょに部屋から出ることなる。
 夜は耳を澄ますとカラカラという音が聴こえた。それはトイレの換気のための筒(正式名称不明)の先についている装置(同)が回る音だったのだが、従兄はそれを空飛ぶ円盤からハシゴが下ろされる音だという。ということで、伯母の家の上空にホバリングしていた円盤は一晩中ハシゴを下して、はて何を運んでいたのだろうか。