メビウスの夜 その一

 はい、八月の十八日の日曜日、初めて新宿のピットインに行ってみました。
 というのも、あの稀代のバリトンサックス奏者にして、熱烈なるSF者でもあらせられる吉田隆一さん率いるblacksheepが、三枚目のアルバム、メビウス∞を引っ提げて、当CDの発売記念ライブを決行するとのことで、畏れ多くもまたご招待なんぞをいただき、これはもう当世流行のSFジャズを全身に浴びるしかない、と、おいちゃんは埼京線さ乗って、新宿に降りたのでした。
 当日はまだまだ蒸し暑さの盛りで、できるだけ地下道を通って、現場にアプローチできれば、とウロンな行動、しかしいやはや地下道もこれまた熱いと、もぐらのようにて、明治通りのきれっばしあたりで地上にぽっかりと出たのでした。
 事前に場所を確認していたけれど、外の空気に当てられて、一瞬だけ体内コンパスに狂いが生じ、あやうくまた駅方面に歩き出しそうになったが、みればそこは仰山人があふれ出ているあの地林坊であったりして、そんな新宿のランドスケープにも助けられ、どうにかピットインに潜り込むことができたのでした。
 と、まだ演奏が始まらない。