不必要の必要 十八

 空ばかり見てたので、何を書いていたのか、よくわからなくなった、というのはいつものこと。
 さて、友人TOの部屋に入って、そこに並ぶ大人の本に驚いて、もう一人のやっぱり驚いた友人KFと、街の本屋に飛び込んだのが、1970年ではあった。
 といっても何せあの70年である。人類の進歩と調和のお祭り大阪万博の年であり、前年は人類にとっては大きな一歩、である。
 なので、そういった類の雑誌、つまり万博のガイドブックやアポロ計画の写真集などはそこそこ自分でも買ってはいたし、夏休みの自由研究の題材にもしていた、ということが書棚をガサ入れして判明した。
 しかしこと単行本の大人の本を買うという動機というか、意志そのものがその瞬間までなかったようなのである。
 で、走っていって(比喩的表現です)、買ったのが、東洋経済社の『アポロ技術への企業戦略』、ともに講談社現代新書の『宇宙空間を開く』と『宇宙時代の常識』、そしてNHKブックスの『SSTの科学』なのではあった。
 記憶にあるのは、まだまだ宇宙関係の単行本が少なったかったということ。東京の近郊都市の普通の書店なので、そのせいなのかもしれないが、時間だけはたくさんあった我々がぐるーっと本棚を見て回って、買えるような値段の本はそのくらいだったのだ。
 先ほど書いたアポロ関連の雑誌や写真集などは、それこそ雨後の竹の子のように発行されていたんだけれど、ね。
 そしてガキンチョはその日から字ばっかのこれらの大人の本と格闘することになるのだった。