沖縄叙景 その十二

 オキナワへ行きたい、行きたい、と、ほざいとったツレのため、とってもイヤなヒコーキ(ブラッドベリには負ける)に乗って来たのだが、到着してみて、でどこへ行きたいのか、と問うても、どこでもいい、とのこと。
 おいおい、どこか行きたいところがあって、オキナワを連呼していたのではないのか!!! それともオキナワという概念というか、イメージをせつに願望していて、ただ着けばそれは成就したのか、とやさしくどやしたのだったが、彼女が唯一、行きたいといったのが、斎場御嶽(せーふぁうたき)だったのだ。
 漢字だけを見ると、なにか空恐ろしい葬儀場のようだが、聞いてみると、私の大嫌いなパワースポットなのだという。
 へん、まあ大嫌いなところへ一度ぐらいは行ってみるのもいいかと、ナビを合わせる。

 御嶽とは南西諸島に分布する聖地の総称で、ここ斎場御嶽琉球王国最高の聖地だという。知らなかったが、ここも世界文化遺産(と書いてある)とのこと。パンフレットによると、琉球開びゃく伝説にもあらわれる、琉球王国最高の聖地なのだという。しかもしっかりパワースポットなんて書いてある。なるほどカップルが多いわけだ。
 運営する南城市観光協会や市の文化課もここが聖地であることを強調していて、とにかく静かに慎み深く「観光」するようにとある。
 そんなわけで、施設に入るとすぐに小さな部屋に案内されて、斎場御嶽の簡単な紹介をする短いビデオを見せられる。それを十数人で神妙に眺めていると、横の席のカップルが妙に騒がしい。画面についてあれこれしゃべっていたかと思うと、今度はアホダラ男が英語の字幕を読み始める。
 と、考えるよりも早く言葉がでてしまった。
「うるさいよ」、と。
 自分でも驚いたが、そんなことをいわれたことのない若者はさらに驚いたらしく、少しだけ静かになる。でも腹の虫が治まらないのか、勝手に立ち上がって、部屋を出ていこうとする。そう、もちろん私にガンをつけつつ。でもなんともよわよわしいガンつけであったことか。

 おっと、また石だぜい。
 こちらは三庫理(サングーイ)。三角形の突き当りが拝所になっている。

 寄満(ユインチ)は、もともと王府の台所の意味だが、世界から交易品が集まる豊饒の満る所と解されているとか。

紙の島、久高島を望む。