沖縄叙景 その十五

 さて、沖縄での二軒目の宿は島の南部にある某ホテル。えええっ、こんなところにあるのー、とナビを疑ったほどの辺鄙な場所に建っている。これじゃよほどの健脚以外、徒歩で遊びに行くことはできゃしません。
 で、ホテル内を散策、フツーのお土産店とコンビニが併設していて、やや微妙ながら、ツレはお気に入りのブツを発見。彼女、それを一つ買っていつものように店の人と仲良くなる。と、そのブツ、つまり糸満ハリコを作っている人の工房が近くにあると聞く。
 ということで、翌日の午前中はそこに出掛けることに急遽決定。
 その工房兼店舗は糸満公設市場の中にあるとのこと。さっそく全能のナビ様にお願いごとをインプットして、一路その場所へ。
 到着したのは午前九時半頃。どこにクルマを停めていいかわからず、また店の場所も不明なので、ツレが一人降りて、市場のおじさんに聞くと、
 「ああ、あすこさー」
 でどこかに駐車場にありませんかと聞くと、
 「このクルマの後ろにでも停めればいいさー」
 とのこと。
 しかしニャン山(にゃんざん)というお店はまだシッャターを閉じたまま、で、またくだんのおじさんに聞くと、
 「そのうち、開くさー」
 とのことで、二人はあたりを散策することに。糸満公設市場は道をくねくねと入ってきた割には、近くに漁港があって、何人かのおばーたちが店を広げていた。ちゃんとした店舗が軒を連ねているが、おばーたちは広場のような場所の一角をそれぞれ確保して商売をしているようだ。
 といっても、客はまだまばら、というかほぼいない。ただおばーたちと少数派のおじーたちの声がゆるい風のようにたゆたっているのだった。
 で、ものの二十分ぐらい歩いてまたもとのところに戻ってくると、頭がもしゃもしゃな青年が前を行く。彼の行く先はどこかなぁ、と思っていると、案の定、ニャン山のシャッターを開けたのが、彼なのではあった。

★これがホテルの店で買った糸満ハリコのチンチンウマグァー。王様がどこかへお出掛けする姿のよう。チャグチャグ馬っこみたいだね、といったけど、名前自体は似ていた。