図書室の後で

 はい、SF乱学講座ですが、『惑星ソラリス』についていろいろと述べてまいりました。まさにいろいろと反省すべき点、多々ではあります。
 特に時間の配分に配慮が足りず、その結果として映画の後半部分に触れられず、総論的な話もできませんでした。ごめんなさい。
 ということで、ここで簡単ではありますが、図書室の場面以降の話をしてみたいと思います。
 図書室でハリーはブリューゲルの「雪中の狩人」やクリスから見せてもらったビデオを統合させることによって、自身がクリスの母親に成り代わるべきと解釈します。
 その表れがクリスが見ることになる母親のポーズに擬したハリーの姿で、煙草を吸いながら遠くを見ているその先にブリューゲルの絵があります。その中央が火事を出している家屋です。
 その後、彼女はクリスとの空中浮遊の後、少し前に拒絶していたリスの跪きを、今度はしっかりと許容し、そればかりか、母親のように顔をクリスの頭に寄せています。
 図書室のシーンの後、ソラリスの海が映され、そして液体酸素をハリーが飲んだシーンに変わります。そしてハリーが蘇生した後に、未公開のハリーとクリスが食事をしている場面が挟まれる予定だったはずで、そこではまさに倦怠期の夫婦の会話のようなものが描かれています。もしこのシーンが活かされていれば、クリスとハリーはソラリスステーションでも夫婦の無間地獄を味わっていた、と見ることができるでしょう。
 そしてベッドを離れたクリスはステーションの廊下で犬の絵を拾っていますが、「雪中の狩人」もまた犬を従えています。未確認ではありますが、絵の犬は猟犬であったのかもしれません。やがてクリスは熱にうなされて、ハリーの幻影のようなモノを何体も見ますが、その中に母親の姿もあり、やがて場面はステーションな中でもあり、またクリスの家でもあるような場所となり、一見ハリーのような女性を抱き寄せるのですが、それは実は母親だったことがわかります。
 そこでクリスは少年時代にまで退行します。この母親が現れる場面で、インク壺の蓋が転がっていて、その音がゴロゴロと響いています。これは液体酸素のボトルの割れる音、あるいは図書室でキャンドルが倒れる音の響きと通ずるものがあると考えられます。
 そういったクリスの夢と同時進行でハリーは消えていきます。映画ではくわしくないのですが、サルトリウスの作った機械に身をゆだねたものと解釈できます。
 しかしソラリスからのお客はクリスの脳波を送ったために現れなくなったわけです。よってスナウトやサルトリウスのお客もハリーと同様の「処置」がなされたことになるでしょう。
 つまりソラリスは目の前に「お客」を届けるのではなく、客を招き入れる「作戦変更」をしたわけです。映画でもステーションから島が見えてきたとの台詞がありますが、それ(らの一つ)が島の上のクリスの家というわけです。
 こうして願望は成就され、家に括り付けられていた風船は天に舞い上がります。
 ブログとしては長くなりましたので、総論的な話はまだ後日。

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★スワ、ソラリスの海のミモイド! いいえ、ただの夕焼け空を逆転しただけです。