北の想像力への極私的歩み その16

 さて、では私が佐々木譲さんのサイトのことを知ったのが「男の隠れ家」の記事からだったかというと、またまたあいまいのままである。もっと前からアクセスしていたような気もするし、そうでもないような気もする。
 たとえばサイトでは『屈折率』という小説が語られた記憶があるが、作品の発行は1999年なので、雑誌よりも前ということになる。
 ちなみに譲さんの作品の発行は、世界の出来事と不思議なシンクロニシティしていて、『武揚伝』で五稜郭が落ちたときにアメリカの五稜郭であるペンタゴンが攻撃を受け、『天下城』で男二人と女一人の人質が解放されると、イラクで同じく青年三人の人質が帰国することになる。
 サイトでは譲さんの日常生活や執筆活動のあれやこれやが記されていて、読者としてはかなり美味しかったのである。またその頃はコメント欄があったので、私もずーずーしくいろいろと書き込んでいた。
 ある日のこと、小説『ソラリスの陽のもとで』が話題になったときも、沼野さんの新訳を読んだばかりの私は、さっそくクリスとハリーの会話の一つが、旧訳では「指切り」なのに、新訳では「聖なるものに誓って」になっている、とエラソーに開陳したのだが、そういったあたりが回りまわって、あの「ソラリス論」に繋がっていくことになる。