「架空の本屋」目録

 ツイッターで展開した「架空の本屋」がいろいろと楽しかったので、まったくの蛇足ではありますし、すでにご存じかとも思いますが、ご紹介した四つの本屋について、簡単な説明なんぞをしておきます。

その小さな萱ぶきの本屋には、重い本があればその本を負い、難しい本には怖がらなくてもいいといい、高い本だとつまらないからやめろという店主がいて、いつも静かに笑っている。

 もちろん宮沢賢治の超有名な文章からいただきました。これは詩としては発表されていないので、あえて文章としました。それからよく誤解されていますが、あの「雨にも負けず、風にも負けず」は、いつも負けてしまうのでそう書かれているはずで、けっして威勢のいい文ではないと思うのです。はい、蛇足の蛇足でした。

店主のボリス・パステルナークが、客の一人ひとりに残りの人生で読める本の冊数を教えてくれる。

 私のお決まり芸、タルコフスキーの日記にある記述より引いています。彼はとある集まりで降霊術により、かのパステルナークを呼び出して、自分があと何本の映画を撮ることができるか聞いたのでした。そしてそれはピッタシカンカンと当たってしまったのです。

店に入ると、後ろで重たい鉄のドアが閉まり、ニヤリと笑った店主から、「とても素敵な本をタダであげるけど、全部読まないとあのドアは開かないよ」といわれ、薄暗い小部屋で「スターリン全集」を渡される。

 これには元ネタ的なものはありません。しかしマル・エン全集にレーリン全集はきっとどこかに健在でしょうが、スターリン全集を喜んで読むという人がはたしてこの世界にいるのでしょうか。いやたぶんいるんでしょうね。

かつての連れ合いと店に入ると、突然無重力状態になり、目の前を「ドン・キホーテ」が挿絵のページを開いたまま通り過ぎる。

 これも恥ずかしながらタルコフスキー・ネタです。ご存じ彼の「惑星ソラリス」の図書室のシーンをそのまんまいただきした。

以上であります。またどこかに新しい本屋を開店する際には、ここでご報告させていただきます。