とある小さなレストランの悲劇

 いつものようにひさしぶりのアップ(?)は、ちょっとだけ真面目な話。
 ふと思いついた円安の弊害について、とある例を今回は開陳してみます。
 どんなお店でもいいんですが、ここはわかりやすく材料を輸入に頼っているレストランのお話です。
 その小さなレストランは夫婦の経営で、数年前に開店しました。アルバイトは忙しい営業時間のみ二人だけ雇っています。定食メニューが基本で、価格は1000円、1日に100食ほど出るとしておきましょう。材料費は1食あたり500円ほど、つまり一人の客で500円の粗利というわけです。
 いちおうことわっておくと、会計用語とかまったく知らないので、利益とか、収入とかの厳密な意味は反映していません。おっさんの飲み屋でのヨタ話として読んでください。
 で、定価−原料費の500円、それを乗ずること100の5万円からアルバイト代と水道代、電気代、ガス代などの光熱費を支出します。バイトは5時間だけ働いてもらって、ギリギリの900円×5時間×2人で、9000円、そして光熱費が合計でざっくり1000円として、バイト代と合わせて1万円。さらに店の家賃が25万円として、これも1日の営業日あたり1万円。
 よって5万円引く2万円の3万円が経営者夫婦に残ります。やれやれ、二人で仕込みから掃除まで10時間ほど働いて、3万円×25(週一休みとして)日の75万円が月収です。かなり荒っぽいけど、年収は900万円。いいじゃん、すごいじゃん、と思うでしょ。はい、もちろん生活はできますね、このままならば。
 ところがどっこいしょ。それは数年前までの、1ドルが80円だった頃の話。ワールドワイド的にいうと、いまや1ドルはどんどんと高くなって、なんと1.5倍。いや円はとほほほほのほと安くなって、120円近くまでダウン、つまり3分の2の価値になってしまったのです。ここんとこ大事。テストに出ます。
 今でも世界通貨はドルベース、そのスケールでいうと、日本人の財布の中身の3万円札が、何も買わなかったのに、2万円になってしまったのです。
 かくしてくだんのレストラン経営のご夫婦も大変なことに。1食の材料費が500円だったのが、今日日は当然1.5倍の750円。つまり儲けの500円が250円になってしまいました。悪いことしていないのにね。これでは必要経費を差し引くと、二人の稼ぎは1日5000円也です。はい、よって二人の合計年収は150万円となります。円安っていうのは、つまりこういうこと、なんじゃないのかなぁ。
 えっ、だったら定食代を1250円に値上げすればいいのに、ですか。間違いなく潰れると思うけど、そう思うアナタ、やってみたら。
 しかしこれは悲劇に一面に過ぎません。ホントの悲劇はこの値上げ我慢大会の先にあるのですが、それはまた気が向いたときにでも。