コルトレーン、安心の4枚

 さて、昨日のジャズ推薦版の続きをちょっと書き進めてみようと思います。サックスでまず名前が挙がるのは、やはりジョン・コルトレーンでしょう。問題はどのCDを選ぶかですが、やっとのことで『BLUE TRAIN』(1957年)、『GIANT STEPS』(1959年)、『MY FAVORITE THINGS』(1960年)、『BALLADS』(1961−62年)の4枚に絞りました。
 彼はとにかく最初に何を聞くかが肝心です。もしトンデモないのを選ぶと最初の3分を聞いただけで、もう一生コルトレーンを聞かなくなるかもしれないのですから。くれぐれも「ジャケットが素敵!」ってことで『アセッション』なんかを買わないように。
 これらはその点ではご安心の4枚。まず『ブルー・トレーン』では、リー・モーガンカーティス・フラーとの絶妙なアンサンブルを堪能してください。そのブラスの構成力の巧みさに驚き、「なんだ、ちゃんとしたこともできるんだ」といってみたくなります。まるで、ピカソの晩年の作品しか知らない人が青年の頃の作品を見た時のように。
 『ジャイアント・ステップ』は、この4枚の中では一番危ないかもしれない作品です。最初にちゃんとメロディを奏でたかと思うと、あとは糸の切れた凧。どんどんと好き勝手にいってしまうのです。しかしすごいのは、その凧がヘナヘナと墜落しないこと。さまざまな束縛を逃れた喜びを表現するかのように、中空を自由に飛び回るのでした。
 『マイ・フェイバリット・シングス』ではソプラノ・サックスの変幻自在な音色に身を任せてください。そして目を閉じれば、その音色の中にサイケデリックな色の動きを発見するでしょう。タイトル曲は有名な『サウンド・オブ・ミュージック』の劇中曲ですが、まだ映画化される前にコルトレーンはこれを録音しています。
 『バラード』は、彼のマウスピースがどうもしっくりこなかった時期に「じゃ、ゆったりのったりとやってみんべえ」と作ったアルバム。結局これがコルトレーンのナンバーワン・セールスなんだから、いやはや。「ジャズなんてぜんぜん知らないもん」っていう彼女が初めて(!)家へ遊びに来たら、食事のあとでワインなんぞを飲んでいるときに流すべき音楽かしらん。しかしCDには何を間違えたのか、同時に録音されたけれどオリジナルLPにはないフリーキーな曲が最後に追加されています。これが流れるとふたりの夜も終わってしまうかも。でもほんとにいいCDです。
 追伸:『アセッション』などのいわゆる「フリー時代」の作品を否定しようというのではありません。私がわからないだけなのです。その魅力にぶっ飛ぶ人ももちろんいることでしょう。
★写真は上記に挙げた4作品のCDジャケット。