クラフト・エヴィング商會を「よむ」その二

oshikun2009-10-10

 ミルリトン探偵局シリーズ1『Think 夜に猫が身を潜めるところ』
 ミルリトン探偵局シリーズ2『Bolero 世界でいちばん幸せな屋上』

吉田音
 なんでも作ってしまうクラフト・エヴィング商會のお二人は、とうとう架空の娘さんまで作ってしまいました。彼女の名前が吉田音さんですが、読者の100人のひとりぐらいは読後も快活でチャーミングが彼女の存在を信じて疑わないかもしれません。
 吉田音さんは1986年生まれ、現在は23歳というわけですが、この本の発行は1999年と2000年なので、13歳の頃の「作品」。彼女の日常の周辺で起るさまざまな「魅力的」な出来事がまさにオトナのタッチで表現されていきます。それをさらに引き立てるのが、ストーリーに関連するいろいろと小物たち。不思議なガラス瓶や古風な映画のチラシなどが散りばめられています。坂本真典さんの写真もステキです。
 個人的に「いいぞ」と思ったのは、シリーズ1で荒川の赤水門、青水門の辺りが舞台になっているということ。ここは比較的にご近所なのですが、都会派のオシャレな人はたぶんあまり近づかない場所なのです。
 このシリーズの種明かしは、『じつは、わたくしこういうものです』と違って謙虚というか、さりげないものです。吉田音さんの著者紹介の下に著者の「生みの親」とかぎカッコで記載されていることぐらいでしょうか。ちなみに奥付の欄には発行者の名前はあるのに、著者の名前は見当たりません。
★この本はクラフト・エヴィング商會名義の本ではありません。ただ著者の「生みの親」とされているだけです。