クラフト・エヴィング商會を「よむ」その三

oshikun2009-10-11


『らくだこぶ書房|21世紀古書目録』
(クラフト・エヴィング商會 写真・坂本真典)

 一冊の古書目録がクラフト・エヴィング商會に届く。開くとそれは未来の古書店が2001年から2050年に発行された古書をまとめて2052年に出したもの。その案内に従ってクラフト・エヴィング商會は月に一冊だけ注文を出す。それらはとうぜん未来から届いた古本だった。この『らくだこぶ書房|21世紀古書目録』はそれら一冊一冊を解説を交えて紹介していく。しかし不思議なことが起る。まだ作っていないこの本が未来の古書店から古本として届くのだ。そう、そして事態はループを描くことになる。添えられた手紙には、この本を作ってもらうためには、未来の古書店の目録を送るとあるのだから。
 ということで、古本ファンはチェックせざるを得ない一冊なのだ。出てくる古本たちも一癖ふた癖、み癖までありそうなツワモノ揃い。ただ残念ながらすべての装丁がクラフト・エヴィング商會によるものだから、どうしてもテイストが似てきてしまう。
 この本の発行は2000年の12月で、まさに企画ぎりぎりの時間。逆にいえばこの時期を待っていたのかもしれない。そしていまは2009年、この目録掲載本の5分の1は発行していなくてはならない計算になってしまう。そう手元のこの本も、すでに背の部分は色が落ちてしっかりと古本の風情を醸し出しているのだった。★本の最後はこの本が古本となって届くという話が展開していく。つまり実際に自分が手にしている本が帯や実際のページが本の形のままに出てくるのだ。これはちょっと不思議な気分。写真は作ろうとしていた本が古本として未来から届き、その最後のページあたりを見ているところ。