クラフト・エヴィング商會を「よむ」その七

oshikun2009-10-15

クラウド・コレクター』
クラフト・エヴィング商會
 この本でクラフト・エヴィング商會が作り上げたのは彼らの祖父です。彼がいわばこの商會の祖であり、彼の「アゾット」というタロットカードを模した不思議な場所への旅を巡って誌面は展開しています。ちょっと『ガリバー旅行記」とか、さらには『神曲』という感じですが、もちろんそこまでシンドイことはありません。しかし毎度のことながら、この本の魅力はやはりそのデザインということになるでしょうか。
ライティング、装丁、レイアウト、そして登場する小物のデザインまでクラフト・エヴィング商會がやってしまうので、これは彼ら総体としての想像力のショーケースであるともいえます。事実、この本は最初にデザインありきで、写真をはめ込んだレイアウトが仕上がったあとで本文を書き始めたとのこと。これは基本的な本作りからするとまったく逆の進行です。
 知り合いにデザインをするカメラマンというか、撮影できるエディトリアルデザイナーがいたのですが、写真を撮る段階では、その写真を誌面にどうレイアウトするかを考えていていました。普通のカメラマンだとデザイナーがどんなレイアウトをするかわからないので、いろんなアングルから撮影しておかなければなりませんが、こうすればひとりの人間が双方を兼ねているので、そういった手間はほとんど省けるし、最初からデザインコンセプトに則った制作が可能だというわけです。その伝でいえば、クラフト・エヴィング商會は本作りのクリエィティプな部分はすべて手がけてしまうので、その相互作用的な意味合いが十二分に発揮されているといえるでしょう。
 でも、いったいどこから始めるのだろうか、といったというスゴイことになっているのです。ただししっかりとカメラマンだけは別にいるので、そこだけ別の風が吹いているはずです。
★祖父か旅するアゾットという場所はすべての宿泊所が酒の蒸留所を兼ねているとのことで、そこを旅する者は数多の奇妙な酒にめぐり合うことになる。