クラフト・エヴィング商會を「よむ」その十三・最終回

oshikun2009-10-22

 『フィンガーボウルの話のつづき』、その他の小説
 吉田篤弘
 2006年の春は吉田篤弘さんの小説ばかり読んでいた。手元には吉田さんの単行本が8冊あるのだが、『フィンガーボウルの話のつづき』と『つむじ風食堂の夜』には書き込みがないので、たぶん1月下旬か2月の初め、『空ばかり見ていた』が2月16日、『針がとぶ』が17日、『百鼠』が19日、『78』が3月2日、『十字路のあるところ』が11日、そして『という、はなし』が12日と読了日の書き込みがある。ほとんど熱中とか夢中とかいう言葉には無縁な人生を送ってきたつもりなのだけど、こんな風に調べてみると、ひと月半ほどで8冊もひとりの作家の本を読んでしまうとは、いわゆる「はまった」ということなんだろう。
 この8冊すべてにいえることは当然のことだが、装丁がきまっているということ。もちろん、クラフト・エヴィング商會のお二人によるものだけど、クレジットには吉田浩美さん・吉田篤弘さんのお二人の名前があって、クラフト・エヴィング商會の名前はない。唯一例外なのは『針が飛ぶ』のイラストが、クラフト・エヴィング商會名義だったということ。そしてちょうどいい厚さと手ごろな重さであることもまた重要だ。好きな作家の本だけどどうしても装丁が好きになれないという人がいる。そんな本にはちょっとだけ吉田さんのカバーをかけてみたくなる。いや冗談だけど。
 そしてそんなことをいっておいてなんなんだけど、これ以降はまだ一冊も吉田さんの本を読んでいないのだから、ある意味こまったものだ。
 きっと突然カレーライスに目覚めた人が一週間ほど食べ続けたあとで、ひと月ばかりカレーの匂いも嗅ぎたくなくなるのに似ているのかも、とこれもまた失礼には違いない。でも大丈夫、カレーライスが大好きなのに間違いはないのだから。