猫と歩く

散歩の途中で、猫と目が合った。
ふつうなら無視されるか、それとも逃げられるかなのだが、
そいつはこちらの後をついてくる。いや、横を歩いたりもする。
はっきりいってまったくかわいくない猫である。
ミャーミャーというより、ミギャーミギャーと啼いている。
こちらが少し早足で歩くと、そいつはちょっと遅れたり、座ったりしている。
でも振り向いて、こちらがにやりと笑ってやると、ちょこちょこと早足で追いつく。
なぜだかはわからないが、たぶんワザと距離をとっているのだろう。
そんなダルマさんが転んだ的な歩みが繰り返される。
そいつは右を歩いたかと思うと、今度は左をいく。
そんな猫との散歩がしばらく続いた。
しかしこんままだと、そいつは家までついてきてしまいそうだ。
でもそれはできない。
無視してさらに速く歩いて、振り向くとそいつはかなり遠くの場所に座っていた。
ここでニコリとすれば、またちょこちょことこちらにやってくるかもしれない。
だから今度だけはそれをせずにまた前を向いて、歩き始めた。
そしてまた振り返ると、そいつは別の道に向かっている。
それを見て、ちょっとだけさみしく思った。