30年目のサークルボックス

oshikun2009-11-07

 学生時代のサークル仲間とひさびさに会う。
 いや「ひさびさ」というにはひさびさ過ぎるかもしれない。人によっては30年弱ぶりの再会なのだから。でも、いざ会ってみると面々の顔にその時間経過を感じられず、まるで、学校の正門で「それじゃまたな」と別れて、翌日学食でまた会ったような、そんな気分なのだ。まあこういった感想というか幻想は同窓会には付き物なのだけれど。
 さて、テーブルを囲んで食事が始まると、すぐに各人は昔のキャラクターが全開となる。そして宴会場の個室はサークルのボックスと化す。やがてみんなの、自分では忘れているけど他の人はしっかり憶えているぞ的な当時の悪事が、次々と白日の下にさらされる。顔が赤くなっていくのは酒のせいばかりではない。
 話は社会問題にも及ぶが、紋切り型ではない見解がつつ述べられる。話は四方へと飛び、誰かの元へと収束する。何本ものワインが空き、口は饒舌となる。
 誰も煙草を吸わない。いいことだ。誰も酒を飲めなくない。これもいいことだ。誰も自分の病気の話をしない。これもとてもいいことだ。
 グラスを口にあてて少しだけ眼を閉じると、まぶたの前をみんなの昔の声が行き交う。ふとここが学校近くの居酒屋で、いつもポケットの千円札の数を気にしていた頃、少し今よりも髪の毛が長く、腹が引っ込んでいた頃のような気がしてきた。
 そして今日、また会う約束などすることもなく、「それじゃまたな」と別れたけれど、学食でふと出会うように、また集まることにしよう。


○一部テレビドラマ「俺たちの旅」のエンディングテーマの歌詞を借用しています。
★タイトル横の写真は、サークルの仲間と27年前にスキーに行ったときのもの。自分たちはわかると思うけど、他の人には顔が特定できないからいいよね。