とぼとぼ映画雑言ロード 05

勝利なき戦い
朝鮮戦争の休戦協定直前の陣取り合戦。「死んじゃったよ、まいったなぁ」という感じで、次々と人が死んでいく、その空虚に描写は、まるで射的ゲームのよう。この映画があまり知られていないのもむべなるかな。グレゴリー・ペックが出ているからって『頭上の敵機』を想像してはいけません。唯一感情移入ができるのは、中国軍のアナウンサーだけでした。
渚にて
 引き続きグレゴリー・ペックの主演作だけど、こちらは前記の作品とは大違いで、まさに秀作。この映画は40年以上前、つまり子供の頃に一度観ているのだが、そのときは戦争映画だとチャンネルを合わしたはずが、その期待とは違っていたけれど、深い記憶として残っている。確かにあんなにみんながすんなり死んでいくかという点で疑問も残る。また余命が限られているのなら、仕事をしないはずだとか、貨幣経済が成立しているのが疑問ということもある。でも全体として抑制が取れて、しかも静かに訴えかけるのがいい。唯一、はでなのがレースのシーンだ。結局フレッド・アステアが勝ってしまう。あのシーンだけが余命のことを忠実に、もしくは素直に表現した場面だったといえるのかもしれない。
スタートレック・ネメシス』
 お金と才能を無駄にした映画。でもこれほどまでに面白くない映画を作ってしまうのは、一種の才能なのかもしれない。
『プライド 勝利への絆』
 高校アメフトの実話映画。チーム監督の役者はあの『バーバー』で神経質そうな理容師役だったが、こちらは熱血マンだ。観ていて飽きないし、ホロリとくる場面もある。でもそれ以上ではない。
『パラドールにかかる月』
 リチャード・ドレフィスの出る映画って、どうしてこうも中途半端なんだろう。南米か中米の独裁者に似ているというだけで、替え玉にされた役者のドタバタ喜劇。でもやっぱりアメリカは正義の味方的な結末です。まさに『イノセント・ボイス』と真逆な映画。ただし民衆の住居のシーンがちょっとだけシンクロした。
『血と怒りの河』
 メキシコ系住民とアメリカ系住民が争う異色西部劇。メキシコのかつての革命軍幹部でいまは盗賊の親分になっている男に助けられた、アメリカ人の子供がやがてその親分を父と呼ぶ。しかし、ある日アメリカ人にかくまわれ、といったところで、またまたアメリカ万歳の映画。
ピンクの豹
 ピーター・セラーズの演技だけを観る映画です。でもまあデビッド・ニーブンもがんばっているし、クラウディア・カルデナーレももちろんカワユイ。ちなみにピンクの豹とは宝石の名前。傷が豹に見えるとか。
愛と喝采の日々
 シャーリー・マクレーンアン・バンクロフトの取っ組み合いが見所。当然のことながらバレーのシーンが美しい。原題は『ターニング・ポイント』で、そうなると制作側が表現したかった意味合いは、日本のタイトルと違って、バレリーナの道を行くか、それとも家庭かという別れ道ということになる。もうちょっといい感じの日本のタイトルを付けられなかったのだろうか。
『ビッグ』
 魔法のゲーム機で子供のままに大人の姿になってしまったトム・ハンクス。まだ彼にはしっかりと髪の毛がある。まあトム・ハンクスの映画に大きな失敗はない。しかし若いなあ。少年の彼がだんだんと大人になっていくのがいいですね。それにあのゲーム。なんとも雰囲気がある。
『朝な夕なに』
 女教師が男子校にやってきていろいろとジタバタする、珍しくもドイツ映画。舞台の学校やアパートがかなりモダンでスタイリッシュ。けっこうかっこいいジャズも登場する。教師と生徒との関係で物語は進むのに、最後はなぜか校長とラブラブ。いい感じで進行しているのに、結局そう終わるのか、というエンディングにはかなりガッカリ。