とぼとぼ映画雑言ロード 06

『ブルグ劇場』
 老俳優と新人俳優に若い女が絡む。珍しくもオーストリア映画。しかも1939年制作なのだから、いまとは国家形態も違っているはず。いやけっこうよかったですよ。短いし、役者のオーバーアクションも気にならなかった。しかもモンタージュ技法といっていいのだろうか。ショットのつなげ方もうならせるものだった。
『ブレイブハート』
 未見だと思っていたら、観ていたというよくある話の映画。民族主義の映画というよりはやはり大量殺戮の娯楽映画である。それにしてもこんなにメル・ギブソンをかっこよく描いていいのだろうか。日本人にとってはイングランドスコットランドウェールズ、そしてアイルランドとの関係はわかりにくい。まあ日本がこの映画の市場ではないのでしょうがないでしょう。でもどうしてアメリカ出身でオーストラリア人のメル・ギブソンが、こういったことにこだわるんだろう。たぶんどこかのインタビューには答えているのだろうけれど、歴史があまりない国に育ったってことで逆に歴史に憧れているのかな。
惑星ソラリス
 最高に素晴らしい。くわしくは9月3日以降の書き込みをご覧いただきたい。
『バベル』
 日本人が無自覚に海外でいい加減な善意を行なって、それが現地の人の不幸につながり、それがアメリカ人旅行者の不運を生み、その身勝手さが顰蹙を買い、そして善良な沙漠の民が裁かれる。沙漠のシーンで船が一瞬映るのは「ノアの箱舟」の意味か。結局、西側先進国の身勝手さを描いたようだけど、よく分からなかった。たしかに緊張感のある映像ではあったし、謎を仕込んでおく手法は認めましょう。でも凛子の母親の死あたりが不明、というか難解、というかどうでもいい。高層マンションをバベルの塔に見立てるのも、アホかと思う。
『あなただけ今晩は』
 パリの街角、飲み屋と売春婦、市場が舞台。有名な割には残らない、といっていいのかな。ジャック・レモンシャーリー・マクレーンが出ていなければ、箸にもかからないのではないだろうか。バーのマスターだけが少しいい。
『上海の伯爵夫人』
 ロシア革命を逃れてきた貴族一家の唯一の働き手は美しい伯爵夫人だけ。彼女の稼ぐ金で生活しているのに、みんなの視線はきつい。そこに盲目の白人元外交官と日本人工作員が絡む。この白人の価値観がよく分からん。昔はその才覚を活かした業績があったのだが、ナイトクラブに自らの理想を反映させようとする。ストーリーはいいのに、なぜかつまらない。まあ悲劇で終わらなかったのか唯一の救いかしらん。
『浮草』
 旅芸人一座の物語。カメラワークはいい。金を持ってトンズラする役者、彼が一番光っていた。それともちろん若尾文子ね。
おくりびと
 いい感じのエンタメ映画。でもこれって「やっぱりちゃんとしなくちゃ」と思わせてしまう点で、葬儀産業のいいPR映画になっているよね。
宇宙戦争
 木戸銭返せ、って、いや払ってないけど。とにかくCGのみの映画。ちなみにトム・クルースの父親って人を殺しているんだよね。オチは昔の「宇宙戦争」と同様なのでケチをつけるつもりはないけど、オチも進化して欲しかった。それ以前にだけど、もう少しどうにかならないのかっていう映画。
『孔雀』
 映像がキレイ。パラシュートも美しい。三人の兄弟がいい。台詞の少ないところもいい。いろいろといい。パンツを脱いでしまうところもまたいい。ただし家族で食事をしているところが、何度もあって外に何事かが起っていて他の住人が立ち上がってそれを見に行くのだけれど、これについての説明ってあったのだろうか。それとも中国の人にとって、自明のことなのだろうか。それについてはちょっと知りたい。追記:などと思っていたらこの映画はかのクリストファー・ドイルの監督デビュー作とのこと。映像が美しいはずだ。