「みちくさ市」に遊ぶ

 23日に行なわれた鬼子母神通りの「みちくさ市」に再び行ってきた。天候も心配したことがまるでウソのようで、ウキウキするようないい天気。古本を見て歩くにはうってつけの日和なのです。鬼子母神を抜けて開催場所に入ると前回よりも人の数も多いようす。まずは一巡りと歩き出す。
 最初に岡崎武志さんの店が目に留まる。というよりも隣の元気のいい「こども店長」の声に吸い寄せられたのです。彼と岡崎さんとの掛け合いが面白い。こども店長によると「あと20分で一冊200円にします」とのこと。「そんなこといっていいのか」と岡崎さんが問うと「だってお父さんがそういってたもん」と返す。その言葉に期待して一巡再開。
 おっと南陀楼綾繁さんが歩いていて、それをテレビカメラが追っている。知らない通行人がカメラの先を見て首を傾げて立ち去る。まあしょうがない。NHK-BSの「週刊ブックレビュー」の取材のようだ。南陀楼さんはピョンピョンと店を見てまわり、それをカメラがあわてて追いかけるのが楽しい。
 不忍通りまで出てUターン。とある店に2冊だけトロツキーが出ている。しかも一冊100円が50円だ。これっていいのか、というような価格だけど、聞くとそれでも店長の女性は書き込みがあると恐縮している。たしかに薄く鉛筆でいろいろと書いてあるけれど、気にはならない、いや参考にすらなる。「最初はもっとたくさんあったんですけど、どんどんと売れてしまって・・」と彼女。この価格ではそりゃそうでしょう。もうちょっと早く来ればよかったと反省しきり。とにかく50円の『1905年革命・結果と展望』は欲しかった本なので大満足。50円の『裏切られた革命』は持っているけど、これも購入。それから鎌田慧さんの『自動車絶望工場』はただでいいという。3冊でしめて100円也。ありがとうございました。
 またこども店長のところに戻ると、しっかり全品200円になっていた。英断である。で、昭和22年発行のかなりぼろぼろの『卍』(もちろん谷崎潤一郎さん)と、なぜか回収本と帯がしてあった車谷長吉さんの『業柱抱き』。この作家のことはほとんど知らないのだけど、しめて400円也。やはりこども店長は商売上手。横では岡崎さんが値札の改訂作業中。で、狙いの『AIRPLANES』(これは1959年の発行らしい洋書の絵本でタイトル通り当時の飛行機の活躍が描かれている。そのフォルムがかなり正確なのがいい)、とウディ・アレンの『ただひたすらのアナーキー』(これにはなぜか週刊ブックレビューの内容に関する種類が一枚入っていた)がともに500円から400円になった。ラッキーと2冊を買って800円。岡崎さんはこども店長を横目で見つつ、赤字にすることもできないしなぁ・・などと大きく独り言。
 そして荒川線の駅近くに移動して、近くの店の「看板本」になっていた『「資本論」も読む』を300円で購入。さらにY字路近くの店でロケットの小さなオモチャを物色していると、取材を終えた南陀楼さんがやってきた。で、古本で膨れた私の「不忍ブックストリート」の袋を見つけて挨拶してくださる。ありがたいことです。ここではそのロケットと、鉄腕アトムとヒゲ親父がバイクに乗ったオモチャを計4つで840円と、坪内祐三さんの『私の体を通り過ぎていった雑誌たち』を400円で買う。
 もう一巡したい気もするけれど、荷物がたいぶ重くなったのでお楽しみは、また今度ということにした。古本の合計金額は2100円。帰りにジュンク堂に寄る。でも本を見るのではなく、行き先は喫茶コーナー。以前もらった400円サービス券がまだ財布の中に何枚も残っているのだ。そしてコーヒーを飲みつつ、ここで南陀楼さんの『一箱古本市の歩きかた』を読了する。まさに現場にての幸福な本の読み方だった。