月に鴨

昨夜、公園を散歩する。
前日の月がすこしだけお出ましを遅らせて、木々の上にかかっていた。
月に向かえば、右後方には木星が光る。
金星に明るさで劣るが、滞在時間が長いので、無精者には愛想のいい星だ。
月はビルの谷間もいいが、やはり水辺や樹木が似合う。
公園の池にもまた同じ月、と思うと同時に形を崩す。
風もないのにと見れば、暗い水面を何羽もの鴨がいく。
池の月は変幻自在に姿を変えて、あたりの灯りも混じらせている。
やがて鴨が去り、月は月として落ち着きを取り戻す。
家に戻ると、「今夜は満月なんですね」と、こちらの心地を見ていた人がいう。

★月の写りを確かめようと、デジカメを取ると、テレビではテノール歌手が、水面に映る月を唄い、ニュースキャスターは昨夜の満月を語っていた。まあよくある偶然。デジカメには鴨がつくった小波に揺れる月の光が、どうにか写っていた。タイトルはご承知かと思いますが、「月に雁」にかけた駄じゃれです。