柴又、記憶のうちに20

 読んでは描いてのマンガの日々
 柴又で暮らしていた頃、小学生の関心事の中心のひとつが漫画雑誌だった。しかし数多くの月刊誌、週刊誌の中で、フォローできたのは少年サンデーとマガジンのみ。この2誌は友達と交換して読んでいたのだ、担当したのはサンデー。なぜなら潜水艦マンガの『青の6号』が連載されていたからだ。でも引っ越すことが決まったあたりから、サンデーを買い続けるのをやめてしまった。そして残念なことに『青の6号』もその翌週に連載が終わった。それからまたマンガを買い始めるのは学生の頃、隔週時代の『ビックコミック・スピリッツ』なのだから、ええと何年ぶりなのだろうか。
 読むよりもさらに熱心だったのはマンガを描くことだった。友だちの家に集まってはガリガリと描きまくり、汚れで手のひらの左が真っ黒になり、あたりは消しゴムのカスが散らばった。よってその家の母親はいい顔はしない。
 絵自体もまったく稚拙なもので、しかも鉛筆書き。ギャグマンガなぞ思いもつかず、ストーリーマンガだといいながら、とりあえず短いページで次回に続くというのが多かった。それでもしっかりと雑誌のタイトルを決めて、表紙だけは立派だった。何本かのマンガをまとめて綴じると発行部数一冊のマンガ雑誌が出来上がる。石森章太郎の『漫画家入門』とかいう本を店で立ち読みしては、墨汁やインクで描くことを憧れていた。
 ブルーブラックというインクがあることもその頃知った。最初は青いが時間が経つと黒になるインクだという。そのインクと付けペンを写真の店で買った。子どもには高いケント紙に鉛筆で下書きをしてから、それをインクを付けたペンでなぞるが、ことごとく失敗する。漫画家入門はペン先から零れ落ちていったのだ。★今気が付いたのだが、こちらの店も14の文具店と同じような色の日除けになっている。何かわけでもあるのだろうか。