柴又、記憶のうちに21

oshikun2009-12-18

アオスジアゲハと自転車
そのみんなにはあまり知られていなかった公園を、私はたまたま神社の森にセミ取りに行って、見つけた。そこは柴又駅の近くで、表通りからは見えにくい位置にあった。当時は神社と公園を隔てるフェンスは無かったと思う。
 まだ買ってもらってから日の浅い自転車をコキコキとこいでこの公園に行ったある日、やはりひとり自転車に乗った同じ年ぐらいの男の子がいた。知った顔ではなかった。しばらく何もなかったが、どちらが先というのでもなく、二人はこの公園の中を自転車で走り出した。それも公園の鉄の囲い内側をギリギリやブランコと木々の間、立て看板の後ろ、砂場と壁のすき間といった極めて狭いコースを選んで、できるだけ速いスピードで駆けめぐるのだ。
 二人は少しだけニコニコしながら、しかし友達ではないので、やや慎み深くその遊びを続けた。お互いにほんの数分走るだけで、どんどんと上達していく。やがて手放しで砂場裏のすき間に突入し、ベンチの間をすり抜けた。その「妙技」にお互い満足した頃、またちょっと笑って、結局ことばをまったく交わさないままに別れた。
 ここの神社ではよくアオスジアゲハを見かけることがあった。黒い羽に、青く光るギザギザの模様がとても魅惑的だった。公園と神社の間にフェンスはなかったので、時たまその蝶を追いかけて公園に出てしまうことがある。するし日陰から日差しの中を飛ぶ蝶の色が見事に変化するのだった。しかし本当の美しさは影の中を飛び時だ。樹木の間隔が狭く、ここは夏のかんかん照りでも、薄暗い。この暗がりの中を、低く飛ぶ美しさに小学生は見とれていた。
 少し前にここを訪れた時、子どもの姿はなかった。隣の神社から飛んできた枯れ葉が、まるで絨毯のように公園を覆っていた。この公園が頻繁に使われていれば、その枯れ葉は蹴散らされるはずだが、それはあくまで均等に地面を包んでいた。
 今回、来てみると遊具のほとんどがなくなっている。今でもここにアオスジアゲハは飛ぶのだろうか。★遊具はうんていを残してすべてが撤去されたようだ。ベンチだけがこの場所に不似合いなほど新しい。タイトル横は数年前に撮影したもの。写りが悪いがまだたくさんの遊具が残されていたのがわかる。