十年前の住まい探し03

oshikun2010-01-30

 似て非なるものの理解
 もちろん賃貸マンションに住み続ければ、家賃の総額も相当なものだ。当時の私の賃貸マンションの家賃は月額15万円ほどだったから、10年住むと更新料も含めて約1900万円以上にもなる。これは決して少ない額ではない。
 ここで単純な例を考えてみよう。私が入居した新築賃貸マンションが分譲価格では5000万円だったとする。もし10年間の家賃を分譲購入費用に当てたとすると残りは3100万円だ。それなら最初から買っていた方が「お得」ではなかったのか、という昨日の話になるわけだが、そのマンションの市場価格が正常に推移したとしても、10年後の価格が3100万円を上回るとは限らないのだ。この正常推移についての後で説明する。
 しかしやはり1900万円は巨額である。これだけあればアレができる、コレが買えるという想像をついしてしまう。だが10年間で、お米や野菜、パスタやパンにいくら掛かったか計算して、田んぼや畑で作ろうとしたり、子どもの教育費の高さにため息をついて、自分で教えようとしたり、飲み屋のお姉さんとのオシャベリの総額に唖然として、女房と夢を語り合おうとすることは、きっと、たぶん、絶対にない。
 家賃もそれと同じで、収入があるのに家賃を払うのはいやだからと、河川敷に「家」を建てて住む人は極めて少数派だろう。家賃はカラオケBOXと同様に時間貸しで、いわば生活費の一種なのだ。だがどうしても賃貸の費用は分譲の価格と似て非なるものゆえに、誤解されやすいのである。
 この約1900万円は、10年間に享受した暮らしの快適性、利便性の対価なのであって、高いか安いかはフトコロ具合と時代の趨勢で判断されるべきだろう。しかし繰り返すけれども、その金額はマンションの購入資金と対比したり、勘案させるべきものではないのだ。
 私の場合、マンションを買う前の10年間を見ると、新築マンションの標準的な価格は、この1900万円ほど低減した。つまり先ほど書いたように「正常に推移して」はいなかったのだ。新築5000万円程度だったマンションも、今から十年前には3000万円ほどになったことになる。さらに10年目の中古マンションなら2000万円程度かもしれない。だから私の賃貸総額1900万円は、暮らしを成り立たせたと同時に、マンション購入のタイミングをずらすことで、差し引きかなりの「利益」を私に与えてくれることになる。