十年前の住まい探し14 

oshikun2010-02-18

 一等地のパラドックス
 まだまだマンション探しの前史が続く。さてその前史だけでなくマンション探し本史まで通じて、一番都心に近いマンションだったのは、目白の物件だろう。今から考えれば身分不相応極まりないのだが、新聞チラシを見て当時の住まいからも近かったので、好奇心ゆえに出来かけることにした。ただ一等地にあるのだけれど、私の通勤には不便極まりない。目的のマンション「目白A」は、目白通り明治通りの交差点を少しだけ池袋方向に行った通りの左側にあった。ほとんど完成されていて、数戸が売れ残っているだけという物件だった。
 普段物件を見に行くときは電車なのだが、この時は車を使った。チラシに駐車場が用意されているとあったからだけど、実はそれは間違いの始まり。
 まず物件からは離れている目白通りにある販売センターを訪ねるが、なんとそこには駐車スペースがない。そこで駐車場の場所を聞くと、だいぶ先のビルの地下駐車場だという。ところがそこへ到達する前に左折する場所を通り越してしまい、無理やりUターン、などなどいろいろと四苦八苦の後に、件の駐車場に着く。あーあ、やっぱり電車で行けばよかったと、そこに車を停めて、その場にいた係員にマンションへの道を聞くのだが、それがまた埒があかない。で、しょうがないから、そこでまた先ほどの販売センターまでテクテクと歩くと、初老の営業マンがそこから案内をしてくれるという。結果、最短距離の何倍かを歩いたことになる。しかしほんとうに私はよく歩いているなぁ。
 というわけで、この「目白A」という物件は、そのマンションそのものよりも、道案内の不首尾の方が印象にまず残ってしまった。物件自体は15階建て程度。価格の割に面積は狭く、眺めも良くない。また駐車場の賃料も高い。エントランス側にドカンと外部非常階段があるというデザインも、好きにはなれず、営業マンの人の良さだけが光った物件だった。
 先日書いたマンション「東中野A」が、高くても何とかしたいという気持ちになってくる魅力的な物件だったの対して、この「目白A」は、さらに安くしまうよといわれても、まったくそういう気持ちにはならない物件だった。はたして、このマンションは完売したのだろうか。
 確かに都心で土地が高いわけだから、周囲の眺めを期待できないし、一戸当りの床面積も狭くなるのは当然のことだ。要はそのデメリットを立地とアイデアでどうリカバーできるかということだろう。残念ながらこの「目白A」には、そのリカバーへの努力を窺うことはできなかった。
 つまり「目白A」は、都心の一等地にも、こんな魅力に乏しいマンションがありうるのだという、ひとつの教訓を与えてくれたことになる。